地域の経済 2006
−自らの魅力を惹き出すための舞台づくり−
平成18年12月
内 閣 府 政 策 統 括 官 室
(経済財政分析担当)

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3.公募に当たって
 「公募」という仕組みが効果を発揮するためには、第一条件として、参入機会の確保が考えられる。そのためには、様々な条件が満たされることが必要になる。しかし、今回調査対象となった団体では、団体属性によって、公募情報の入手先に明らかな差がみられた。また、審査に当たっても、審査基準が予め示されていなかったり、第三者の審査への参加が確保されていなかったり、審査結果の通知に当たって、結果や総合的な評点のみを通知していたケースも少なくなかった。また、公募のための資料作成が大変煩雑であるという声も多く聞かれた。公募に当たっては、透明性と公平性の確保に加えて、公募する団体の書類作成負担を考慮すべきと言えよう。
(1)公募条件に関すること−公募を知ったきっかけと公募期間
 公募情報の入手については、民間企業と公的団体とで明らかに差がある。公的団体は以前から管理業務に携わっていたことから、公募になるという話も役所から事前に聞いていたところがほとんどである。一方、民間企業は役所のホームページから情報を入手したという回答が過半を占めた。ホームページを常日頃チェックしていないと知り得ない情報であったと言える。

 一方で、公募を告知するうえで望ましい媒体を尋ねたところ、いずれの属性においても「役所のホームページ」が一番多く、次いで、役所の広報誌や新聞広告となっている。一方で、役所の掲示板への掲示や雑誌の広告による告知は挙げるところは極めて少なく、公募情報を知らしめることには向いていないと言える。

 役所のホームページは望ましい媒体として期待されているが、事業者に見つけやすい作りにする必要がある。自由回答では指定管理者情報のホームページやメールマガジンなどが好ましいというコメントもあり、都道府県や市町村単位ではなく、全国の指定管理者の公募情報を一括してまとめているようなホームページがさらに充実すれば、より便利になるかもしれない。

第2−2−13図 公募を知ったきっかけ
第2−2−13図
第2−2−14図 公募を告知するうえで望ましい媒体
第2−2−14図

 一方で、公募の告知があってから締め切りまでの期間を尋ねたところ、「1か月以上」という回答が約60%と最も多く、「2週間から1か月未満」という回答も約30%存在した。

 これに対し、理想的な公募期間を尋ねたところ、「1か月から2か月」という回答が60%弱、「2か月以上」という回答も30%近くあり、理想と実際にズレが生じていることが読み取れる。

 今回の指定管理者制度の導入は、制度が施行されてから3年間で公募するか否かを決定する必要があったため公募期間が短かったのかもしれないが、今後、再公募する際には、これらの回答を参考に、期間を長めに設定することが望ましい。

第2−2−15図 公募期間の実際と理想
第2−2−15図

(2)公募条件に関すること−受託額の決定方法
 公募の応札価格はどのように決定されるのだろうか。

 行政側から予定価格が提示されていた場合は40%程度、従前の契約額が提示されていた場合は30%程度、予定価格の提示がなかった場合が25%程度となっている。

 一方で、応募価格の決定は、従前よりもやや低い額を入札したケースが団体属性を問わず、数多く見られる。また、事業の採算性よりも事業の獲得を優先させるケースも10%弱あった。

 また、民間企業は「自らの収支予測によって決める」が全体の40%ほどを占め、公的団体やNPOとは差がみられている。収支予測をしっかり立てるのは、民間企業の特性と言える。

 いずれにしても、予定価格を下回る価格や、採算性を度外視した価格の設定が全体の半数近くに上っており、指定管理者制度、ひいては公募制の導入によって、事業者にとって、価格低下圧力が生じ、行政側が予定していた価格よりも低く落札されることも多数あると言える。ただし、採算を度外視してまで案件の獲得に乗り出すことは、いずれ業務の健全性を問われることになる。とりわけ、指定管理者は管理の継続が重要視される。適切な収益を上乗せした上で、かつ、如何に安くする方法を見出せるのか、難しい選択が続くとみられる。

 指定管理者に関する既存調査結果によると、民間事業者の参入に期待する事項として、「財政支出の削減」が第一に挙げられている。一方、制度導入時の懸念材料としては「収支悪化による指定管理者破綻・撤退」が第一に挙げられており、自治体は、支出の削減をしつつ、運営の安定を確保するという、難しい綱渡りを迫られているとも言える。

第2−2−16図 行政側からの予定価格提示の有無
第2−2−16図
第2−2−17図 応募価格の決定方法
第2−2−17図

(3)審査に当たって−審査基準の明示、審査結果の明確化
 公募された案件の審査に当たっては、透明性の確保が何よりも重要となると考えられる。

 明確な基準の提示の有無については、「明確に」「おおまかに」を合わせて80%強で提示されていたが、事前の提示が全くないケースが10%ほどもみられた。これではプレゼンテーションの機会があったとしても、どこに力を入れて説明すべきかが分からず、評価のポイントも分からないままに資料を作らなければならないことになる。従前、行政からの委託業務を受けたことのある団体ならば評価のポイントがある程度は分かるかもしれないが10、新しく参入を決意する団体にとっては「酷」と言わざるを得ない。

 審査に当たって第三者が関与する仕組みは80%以上で導入されているが、関与のない場合も10%弱存在している。審査に公平な視点を確保するためにも、第三者の関与を義務付けるべきと言えよう11。選定委員の選定方法が不透明という指摘もみられ、このような批判を引き起こさないためにも、選定委員の選定方法自体も明確にすることが必要であろう。

 また、審査は一般的に、様々な項目に関して評価をして点数化し、それを積み上げて総合得点を算出するという方式が取られているが、個別の項目まで結果を提示している場合が45%程度だったのに対し、総合得点のみを提示している場合は20%程度、結果のみを通知した場合が30%程度みられた。採点で1位となったにもかかわらず、次点の業者が「政策的に」選出されたケースも報告されている。審査結果の透明性がなければ、事業者側に「やるせなさ」「諦め」ムードが漂い、新規参入に対する見えない参入障壁にもなりかねない。

 一方で、審査結果の過度の開示に関して、深刻な事例を指摘する声もあった。情報公開条例に基づいて事業提案書が開示され、企業ノウハウの流出が生じていたり、他の案件で指定管理者となった事業者の提案書をコピーして指定管理者に当選したり、といったケースも散見される、とのことである。行政の情報公開は世の中の流れであるものの、必要悪にならないように、企業のノウハウといった知的財産権は守れるような仕組みを講じる必要性があると言えよう。

第2−2−18図 審査基準の明示
第2−2−18図
第2−2−19図 審査への第三者の関与の有無
第2−2−19図
第2−2−20図 審査結果の開示
第2−2−20図
(4)公募上の問題点
 公募上の最大の問題点は属性を問わず、「書類が煩雑」であることである。指定管理者は公的部門の仕事を民間企業が担当することを可能にして、民間企業の「効率性」を公的部門にも導入することが目的である。よって、書類の煩雑さによって、民間企業が参入を見送ったり、公募のための仕事が通常の業務を圧迫させたりしてはならない。自治体は、どの書類が「煩雑」なのかを見極め、不必要な書類は作らせないという態度を徹底すべきであろう。最低限の仕様を設定して、プレゼンテーションにおける自由度を確保し、応募団体の力を発揮させるような環境整備に徹するという手法もある。なお、公募上の自由度はある程度確保されていたようである(確保30.8%、ある程度確保47.0%、自由度はあまりない12.6%、自由度はない5.1%)。

 また、「公募期間の短さ」は民間企業、NPOともに30%程度が問題点としている。理想的な公募期間と合わせて、熟考すべき点であろう。

 民間企業が問題としているのは「仕様が不明確」で「説明が不十分」という点である。新規参入する民間企業は手探り状態の中を、「短い公募期間」内で書類を仕上げて、公募に臨む。行政側に本当に民間企業を参入させたい意思があるのなら、懇切丁寧な対応が必要と言えよう。

 なお、「問題点はなかった」という回答も1/4ほどを占めており、中でも公的団体とNPOでは30%余りが問題点はなかったと回答している。

第2−2−21図 公募上の問題点
第2−2−21図


8. 民間事業者に期待する事項として、みずほ情報総合研究所(05年5月)の調査では「財政支出の削減」が86.9%、三菱総合研究所(05年12月)の調査では「財政支出の削減」が90.5%とともにトップになっている。また、三菱総研の調査では、指定管理者導入時の懸念事項として「収支悪化による指定管理者破綻・撤退」が52.1%とトップになっている。
9. 今回の調査で、プレゼンテーションの機会の有無を尋ねたところ、おおむね8割が「ある」と回答。プレゼンに使えた時間は、「1時間未満」58.7%、「1〜2時間未満」21.9%など。
10. 自治体から委託事業を受けた経験の有無を尋ねたところ、「ある」と回答したところは、「民間企業」67%、「公的団体」93.9%、「NPO」54.1%、「その他」(共同企業体など)70.7%。
11. 既存の調査では、「第三者が関与する場合」72.2%、「職員のみで構成」25.8%、「その他」2%となっている(日経グローカル、2006年4月)。これは、民間企業とNPOの案件のみを対象としているため、内閣府の調査とやや異なる結果がでたと言える。

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