平成5年

年次世界経済報告

構造変革に挑戦する世界経済

平成5年12月10日

経済企画庁


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第1章 世界経済の現況とその特徴

第4節 拡大の続く東アジア経済

東アジア地域では,92年の成長率が香港,台湾,韓国等NIEsで前年比5.3%,東南アジアで同5.8%となっており,経済は引き続き総じて堅調に推移している。先進諸国の経済が総じて力強さに欠ける中,これら地域は安定基調の物価と相対的に高い成長率が両立した良好なパフォーマンスを示している。

中国では,91年前年比同8.2%,92年には同13.O%と成長を加速させており,93年も10%を超える成長が見込まれているが,過熱表況を呈している。

本節では,拡大の続く東アジア経済の現況をアセアン諸国と韓国(NIEs発展のケーススタデイとして)に分けて分析し,あわせて中長期的視点からの課題を探ってみる(なお,中国経済についての分析は第2章参照)。

1 良好なパフォーマンスを示すアセアン経済

(1) 自立的な性格を強める経済発展

(成長を支える内需の高まり)

世界の成長センターといわれるアジアの中でも,アセアン(本節では,シンガポール,タイ,マレーシア,インドネシア,フィリピンの5か国を指す)は経済の過熱感が和らぎ,相対的に高い成長率と物価の安定化など良好な経済パフォーマンスを示している。

アセアン各国の成長率と需要項目別寄与度を,80年代後半についてみると,経済停滞の続くフィリピンを除き,ほぼ共通した動きを指摘できる。各国ともエネルギー,一次産品価格の下落から景気が低迷していたが,80年代央から回復した。成長を牽引したのは,景気拡大を続けていたアメリカ向けやプラザ合意後の円高下にあった日本向けの輸出の拡大であった。その後の成長率の高まりは輸入の増加を伴い,成長に対する外需の寄与は低下してきている。こうした状況を背景に成長率は88,89年頃をピークにやや鈍化してきているが,92年でも6~8%台の成長率を達成している。この間の成長を支えたのが,設備投資と個人消費による内需の高まりである。設備投資の増加は第3章第2節でみるように80年代後半に各国へ集中した直接投資の増加に符合する。また持続的な成長に伴う一人当たりGNPの増加による個人消費の拡大がこの時期の成長を下支えしたものとみられる(第1-4-1図)。

また,各国とも急速な経済の拡大により,80年代後半から91年にかけて物価上昇が加速した。このため各国とも過熱した経済を鎮静化するため,90年以降抑制気味の経済運営を採っており,92年に入ると,消費者物価上昇率は,高水準にあったインドネシア,フィリピンを含め,各国とも落ち着いてきている(第1-4-2図)。

以上のように,経済停滞が続くフィリピンを除き,各国とも相対的に内需に支えられた高い成長と物価の安定といった全体としてバランスのとれた経済へ移行しつつある。

(拡大を続ける輸出)

投資収益収支の赤字や輸入の増加から成長に対する外需の寄与は低下してきているが,先進国の景気が停滞する中,輸出は引き続き増加を続けている。

日米の景気が停滞する中,どこが主にアセアンの輸出の受入れ先となったかをみるために輸出の地域別寄与度をみると,87~89年と90年以降では変化がみられる。87~89年では日本,米国の寄与が大きいが,90年以降になると日本,米国に比べ相対的にNIEsの寄与が高まっている。先進国の景気が停滞する中,NIEsがこの時期のアセアンの輸出を下支えしたものとみられる。同時にオーストラリア,中近東などのその他地域も一定の寄与をしており輸出先の多様化がみられる(第1-4-3図)。

輸出が拡大を続けるためには,輸出市場の存在とともに,価格,品質面で競争力ある商品が必要である。そこで商品別の輸出の動向をその世界全体の輸出シェアでみてみる。世界貿易に占めるアセアンの輸出シェアは,輸出全体で90年4.2%であるのに対し,近年輸出の伸長が著しい衣料品,テレビ・ラジオ,電子部品の世界の輸出市場でのシェアは,各々8.7%,17.5%,15.9%となっている(第1-4-4図)。こうした堅調な輸出の拡大の背景には,日本からのエレクトロニクスやNIEsからの繊維等軽工業部門への直接投資の流入がある。

(東アジアにおける相互依存関係)

NIEs,更にアセアンと続く重層的な経済発展の中で,これら東アジア諸国は,輸出指向型の経済運営により急速な工業化を実現している。こうしな工業化の進展に伴い,70年代までのアセアンにみられたような農産品,原材料等の一次産品の輸出に依存した貿易構造は大きな変貌を遂げている。東アジア域内では製品貿易の拡大を通じ貿易面での相互補完関係は強まっている。

そこで,東アジア各国の輸出結合度により,これら諸国のリンケージの程度をみることとする。近年の経済発展の著しいアセアン側からみると,アセアン域内では,各国とも伝統的に同地域での加工,中継貿易基地として発達してきたシンガポールとの結びつきが強い。シンガポールを除くとアセアンの中でも同じようなテンポで発展してきているタイ,マレーシア間の結合が強い。なおインドネシアとフィリピンは域内でのリンケージはあまり強くない。

また,NIEs,アセアン間のリンケージは強く東アジア域内での結びっきが強化されてきている。アセアンの場合,日本とのリンケージも強くなっている。アセアンにおいて日本やNIEsとのリンケージが強くなっているのは,80年代後半にこれら地域からアセアンへの直接投資が急増し,これを契機として貿易面での依存関係が強まったためとみられる。

なお,経済拡大の著しい中国は,文化的共通性があり,地理的に近接した香港,台湾とのリンケージが強く,この他日本とのリンケージが強くなっている(第1-4-5表)。

(消費構造の変化)

80年代後半の急速な経済成長に伴い,一人当たりGNPも増加している。所得上昇により耐久消費財も普及してきており,国民の生活水準は着実に向上しているものとみられる。例えば乗用車の販売が,タイでは92年には36万台(86年では8万台),マレーシアでも11万台(同6万台)と普及が進んでいる。テレビの登録台数も再生品も含めてマレーシアでは190万台(同155万台)に達している。

次に,消費構造の変化をみるために,消費の中の各支出費目の比率をみると,90年で食料費の比率は,一人当たりGNPが1万ドルを超えているシンガポールの19%から経済停滞が続くフィリピンの59%まで幅がある。一般的に所得が上昇するにつれ,衣食住の最低生活水準が満たされ,更にその他の自由裁量的な消費が拡大する傾向がある。そこで食料費,家賃・光熱費,衣料費からなる基礎的消費支出を除いた選択的消費支出の割合と一人当たりGNPの関係を,80,85,90年の各時点で比較してみる。一人当たりGNPにみられる所得の上昇により,教養・娯楽費等の自由裁量的な性格をもつ選択的消費支出の割合は,フィリピンを除き各国とも,80年代に上昇している(第1-4-6図)。一人当たりGNPと選択的消費支出の割合の間には相関性があり,例えば90年のタイの消費構造は,85年当時の韓国の消費構造に近いものとなっている。今後とも経済発展に伴い,所得の上昇がみられるならば,選択的消費の拡大による持続的,自立的な個人消費の拡大が期待される。

(2) アセアン諸国の課題

(AFTAの発展の可能性について)

92年1月シンガポールで開催されたアセアン首脳会議で,域内を自由貿易地域とするAFTA(アセアン自由貿易地域,ASEANFREETRADEAREA)の創設が合意された。続く12月のジャカルタにおけるAFTA評議会で,93年1月から域内自由貿易化のための手段としての共通効果特恵関税制度の実施が確認された。

主な合意内容は,農産品を除くほとんどの商品について,関税率を15年以内にO~5%まで引き下げることとした。共通効果特恵関税の対象となった植物油,セメント,肥料等の15品目については優先的に関税率を引き下げることとし,現行関税率が20%を超えるものについては10年以内に,現行関税率が20%を下回るものについては7年以内にO~5%へ引き下げることとした。

AFTAの創設は,アセアンの経済発展に伴い一層の貿易の拡大を目指すものであり,同時にアセアンへの直接投資が90年以降伸び悩む一方,中国やベトナム向けの投資が増加していることから,再び海外からの投資の拡大を図ろうとしたものである。

こうした域内経済協力は,77年のアセアン特恵貿易協定にみられるように以前にも試みられたことがある。しかしながら,こうした域内経済協力は,各国の比較優位関係が必ずしも相互補完的とはいえず,経済発展の程度に差があったことから実効性に乏しいものであった。そこで優先的な関税引下げ分野である15品目について,その競争力を比較することにより,AFTAの発展の可能性をみてみる。15品目の各国の競争力をみると,概ね化学,プラスティック等の基礎素材の競争力は弱く,木製家具,衣料等の軽工業部門の競争力は強い。しかしながら特定の国がおしなべて競争上優位な状況にあるわけではなく,また特定の国が不利な状況にあるわけでもない。15品目トータルの競争力係数は,各国ともほぼゼロの近傍に位置しており水平分業の状態にある(第1-4-7図)。こうしたことから現在のところ共通効果特恵関税対象の15分野については,平均すると各国間に競争上の優劣はみられない。

しかしながら,シンガポール等を除く各国は実施,除外品目の選定に手間どり93年1月からの関税引下げを実行できなかった。また,AFTAの合意内容には,国内産業に大きな影響が予想される品目については適用除外が認められている。このため各国とも国内事情を背景に多くの適用除外品目を設けている。こうしたことから域内の経済協力をさらに発展させるためには,相互互恵を前提として国内の市場を積極的に開放していくという参加各国の強い意志が重要である。なお,93年10月にシンガポールで開催されたアセアン閣僚会議において,各国は関税引下げについて94年1月から実施することを改めて合意した。

また,アセアン各国を含め,日本,アメリカ,オセアニア等も参加しているAPEC(アジア太平洋経済協力)が貿易,投資の一層の自由化を目指している。開かれた経済協力の場としてのAPECを通してアジア太平洋地域の交流拡大が図られることにより,同地域の経済発展が維持,促進されることが期待されている。こうした中,AFTAもグローバリズムの理念と調和した開かれたものとして運営されていくことが望ましい。

(中国への投資のシフト)

アセアンの経済発展は直接投資の流入を契機とするものだっただけに,将来的にも安定的な投資が行われることが望ましい。最近のアジアへの直接投資をみると,アセアン地域への投資がインフラ面での制約や人材の確保難などから飽和状態にあるのに対し,中国への直接投資が顕著である。中国への直接投資(契約ベース)では,91年の120億ドルから92年には581億ドルに急拡大している。92年のアセアン全体の直接投資が276億ドル(承認ベース,以下同じ)であったことを考えあわせると急激かつ大規模な投資が中国に流入していることがわかる。この他にも市場経済を導入し経済改革を進めるベトナムにも92年19億ドルの直接投資があり,外国資本の自由化を進めた88年以降の累計では46億ドルに達している。91年7月以降外国資本の自由化を進めているインドでも,直接投資が増加しており,91年の2億ドルから92年には15億ドルに拡大している。このようにアジアにおいてはアセアンへの投資が伸び悩む中,潜在的な成長の可能性を秘めた地域への投資が活発に行われている。今後はアジアの中で直接投資受入れのための競争が展開されるかもしれない。アセアンは引き続き安定的な投資を呼び込むためにも,良好な経済パフォーマンスを維持,発展させつつ,インフラ面での整備,人材の育成が重要といえよう。

2 競争力の回復を目指す韓国経済の課題

(景気は緩やかに回復)

総じて好調な成長を続けている東アジアの中にあって,韓国経済は92年に大きく減速した。過熱気味の景気に対し91年央から引締め政策を採ったことから減速を始めた。実質GDPは,92年第4四半期に前年同期比2.5%増と一段と伸び悩み,92年全体では4.8%の成長にとどまった。このように景気は第2次石油危機後の80年のマイナス成長以来の厳しさとなった。特に実質設備投資が対前年同期比で92年第4四半期に2桁の減少となり,建設投資も第2四半期からマイナスに転じるなど,投資の不振が目立った。

景気減速の要因としては,第1に91年から「物価安定及び国際収支改善対策」として金融引締め等の総需要抑制策が採られたこと(通貨供給量の増加率の抑制,歳出削減等),第2にいわゆるバブル経済が崩壊したこと(89年3月末に1,000を超えた株価指数が翌年9月末には約600と40%下落)が挙げられる。

しかしながら,93年に入り成長率は第1四半期前年同期比3.3%,第2四半期同4.3%と緩やかに回復している。総固定資本形成も第2四半期には対前年同期比で増加に転じている。今後の韓国経済の見通しについては,当初韓国政府は年後半には回復し,93年は6%成長の回復が見込めるものとしていた。回復の要因としては,①1月の公定歩合(韓国銀行再割引率)の引下げ(7%→5%)に加え,3月に採られた公共事業の前倒し執行,投資減税等を内容とする景気浮揚策(「新経済100日計画」)等の政策効果,②ウォン安等による輸出の増加,③インフレの鎮静化等が考えられている。しかしながら,今夏の農産物の不作による物価上昇の懸念及び「金融実名制度()」による投資マインドの低下から93年の成長率は92年の4.8%をも下回るとの見方もあり楽観できない(韓国経済企画院は93年の経済成長率予測値を発表した。これは韓国開発研究院によるもので,年間経済成長率を4.5%と予測している。なお,韓国銀行は4.0~4.3%と更に低い見直しを発表している。)。

(輸出志向型の経済発展)

これまでの韓国の高度成長の軌跡をみてみると,GDPの需要項目のうち輸出が大きく構成比を高めている。ただし,韓国の輸出主導型成長には,輸出の増加に対応する資本財・中間財の輸入の増加がビルトインされてきた。また,資本財輸入及び海外からの技術移転に支えられて総資本形成も高い構成比率を維持してきた(第1-4-8図)。商品別輸出の構成をみると80年代に軽工業製品から高付加価値製点に大きくシフトしており,特に機械類,電子機械が大きく伸びて韓国の輸出の主要な品目となっている。国別輸出先をみるとアメリカ,日本市場に大きく依存しているが,最近はアジアのシェアも伸びてきている(第1-4-9図)。

近年,軽工業製品を中心としたアジア諸国からの追い上げを受け,韓国の当該産業も海外展開を図っており,投資累計額はこの10年で12倍になっている。

投資先はインドネシア,マレーシア,フィリピン,タイのアセアン諸国が中心となっている。

しかし,輸出志向型発展を支えてきた経済状況に近年変化がみられる。第1に,対外面では,87年以降中期的にはウォンが切上げ傾向で推移していること,また,一部保護主義的な通商政策を迫る先進国と急速に追い上げてくるアセアン諸国等途上国との狭間で競争力強化を迫られてきている。第2に,国内面では,韓国経済の規模が拡大し,その構造も複雑になった上に,民主化の進展で,政府の指示・統制に財界グループが応えるというこれまでの方法が難しい段階にきている。第3に,労働生産性の伸びを上回る賃金上昇により韓国製品の価格競争力が低下してきている(87年の民主化宣言で労働組合が強化されて以降,賃上げ闘争は激化しており,93年春の「現代」系列のストライキがあった)(第1-4-10図)。

(経済体質の強化)

このため,国際競争力を維持し,韓国経済の活力を保つために,①労働生産性の上昇に見合った賃金上昇を図ること,②製品の高付加価値化を一層図ること,③貿易相手国を多角化すること,④海外展開をさらに積極的に図ること,⑤国際的に市場開放を推進し,韓国企業の体質強化を図ること,⑥資本財,中間財産業を育成することが必要となっている。

韓国政府は上記の目標を実現するため93年7月「新経済5カ年計画」を策定した。現下の政治の民主化の大きな流れの中で,「計画」のモチーフは民主化された社会゛での経済発展のための基盤整備ということで,単に効率性だけでなく公平性にも重きを置いたものとなっている。その方途として制度面における改革に重点を置いたものとなっているが,ここでは韓国経済の競争力の回復策としての視点から主要な施策をみてみる。

まず生産性向上のために,①資源の効率的活用を図るため産業構造調整を促進すること,具体的にはこれまでの財閥によるコングロマリット的事業展開が経営的にも限界にきていることに鑑み,各財閥の専門業種を先進国に伍して国際的競争力が期待できるものに限定し,企業グループの再編成を図ること,②財閥系列会社間の債務保証を縮小し資金集中を緩和する等公正競争秩序の定着を図り,不公正取引行為の防止等監視体制を充実し,公正競争協議会を設置すること,③企業財務についても,連結財務諸表の作成義務の対象法人の拡大等企業経営の革新,④雇用安定と労働力需給の円滑化等を図るため雇用保険制度の施行,職業訓練の支援,⑤土地利用については土地利用関連法案の統廃合により開発可能な土地を拡大,関連規制緩和,工業団地開発への民間の参加と税制の優遇,⑥金融面では,金利の自由化,金融取引秩序の確立(「金融実名制」),⑦中小企業育成策としては,産業構造の基盤を確立するための中小企業の業種転換の誘導及び設備の海外移転促進,小企業育成のための小額簡易保証の推進,が挙げられている。

高付加価値化については,これまでも進展してきているがと81年から92年にかけて機械類,電気機械,コンピュータ等の特定産業の生産増加が顕著なものとなっている(第1-4-11表),今後も,①先端技術部門への技術開発・設備資金の供給拡大等技術開発中心の産業政策の推進,②情報インフラストラクチャーの整備(広域公衆情報通信網の構築,ハングル情報処理技術の開発),③航空機,情報・通信機器等の技術開発及び先進国との技術提携,④知識サービス産業への財政・税制,金融による支援,⑤標準化事業の推進,⑥R&D投資をGNPの3~4%に拡大するための財源の効率的配分,⑦技術集約型産業の促進のための創業育成センターの設立,⑧先進国からの先端技術産業誘致のため外国人投資企業専用の工業団地の造成が挙げられている。

貿易相手国の多角化及び海外展開については,①途上国向け輸出延べ払い金融の拡大,②プラント受注等途上国との産業協力の強化,③独自の海外マーケティングの基盤拡充(自社商標製品の輸出,独自流通網の確保),④貿易特別会計による中小企業のマーケティング支援,⑤輸出保険規模の拡大,⑥貿易通関手続きの簡素化が挙げられている。

市場開放と韓国企業の体質強化については,①外国為替取引に関する制限の緩和,②外国人投資開放業種の拡大,③貿易関連制度の国際規範への整合化が挙げられている。なお,これに関連してこれまで対日輸入を実質的に制限してきた自動車,家電機器等258品目について,今後5年間に段階的に半分にし韓国市場を開放することが決定された。

さらには韓国経済の近代化を図るため,住宅普及率の拡大等国民生活の充実を目指している。農業分野の近代化については韓国農業をより国際競争力ある高品質作物の生産ができるものに転換させる構造改善事業等を柱としている。

コメの「糧穀管理制度」についても政府買上げ量の縮小,価格の引下げが示されており,94年政府予算案に盛り込まれている。

このように「新経済5カ年計画」では,制度面から先進国化,民間主導の成熟した経済構造への転換を目指している。短期的には金融実名制実施による金融市場の混乱が懸念され,また,大学新卒者の就職観にみられる技術者軽視の風潮から技術力の強化には時間がかかるかもしれない。しかし,OECD加盟が議論されるなど着実に韓国の経済力は高まっており,先進国化を目指した経済政策の着実な実施が望まれる。