平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第16章 世界貿易
白書の本編では,地域統合の活発化とURの関係について述べており,EC統合及び米墨加自由貿易協定等についての分析を行った。自由貿易協定(圏)といった比較的強い国家間の経済的結びつき以外にも,より緩やかな経済協力形態ではあるが,APECという環太平洋諸国を対象とする経済協力関係が注目されてきた。APECは,89年11月に設立され,①開放性の確保,②多様性の認識に基づく相互平等の尊重,③共通関心課題の追求を基本理念としている。APEC中心的な役割は,アジア・太平洋経済に係る重要課題についての協議,分野別協カプロジェクトの推進である。
APECが注目されてきた背景には,アセアン諸国を中心に検討されていた EAEG構想(参考資料参照)がある。アセアン諸国及びNIEs,日本を中心に直接投資,貿易が拡大しつつあり,世界経済のなかでアジアの占める比重が高まっている。こうしたアジア域内での経済関係をより強化する目的でEAEG構想(その後EAEC構想と変化)が登場してきた。しかし,EAEG構想については,米国を中心にブロック経済化への警戒感が強い。また主導国であるマレーシア以外のアセアン諸国内からも,米国抜きの地域経済圏構想に対して消極的であることからその実現が困難となってきた。アセアン諸国にとって,貿易,投資においては米国のウエイトが低下してきているものの,米国の各国経済における重要性が依然として大きいことが最大の理由である。