平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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II 1990~91年の主要国の政策動向

第12章 その他アジア

1. タ  イ

(1)第7次経済社会開発計画

91年9月に閣議決定され,新年度入りの10月から実施された「第7次経済社会開発計画」では,タイがアセアン,インドシナ地域における金融,貿易,観光センターになることを目指している。「第6次経済社会開発計画」(1987~1991)期間は,輸出,投資のGDPに占める比率が高まるとともに高成長を達成した。しかし,高度成長にともなう歪みが大きな問題となってきたことを重視し,①経済・所得格差の是正,②インフラ及び人的資源面における制約の改善,③マクロ経済バランスの改善等を考盧しつつ,経済成長率は「第6次経済社会開発計画」時のような2桁成長(10.5%)に対して,年平均8.2%の適度な経済成長を達成することとしている。

「第7次経済社会開発計画」において財政政策では,地方分権化を進めるとともに,金融政策では農民や零細事業者への信用供与,住宅,土地資産保有のための信用供与が重視されている。

(参考)「第7次経済社会開発計画」の概要

(2)規制緩和の進展

① 為替管理の規制緩和

90年5月にIMF8条国への移行を宣言(それまでは14条国)するとともに,為替管理の規制緩和(第1弾)を発表した。その骨子は,i)それまで中央銀行での手続きを要していた外貨の取得や外国への送金が商業銀行の手続きで可能となったことと,ii)外貨の取得や送金の上限を引き上げたことである(資料1)。

さらに,91年4月1日に為替管理の規制緩和(第2弾)を発表した。その内容は,i)タイ国籍の居住者が外貨預金口座を開設することを認める。ii)規制緩和の第1弾で引き上げられた海外旅行にともなう外貨持ち出しの制限をさらに緩和し,現金については,外貨持ち出しが無制限となった。iii)投資にともなう外国為替手続を緩和することとし,タイへの投資に伴う外国為替手続については,原則として中央銀行への登録が不要となった(資料2)。

② 関税引下げ

91年に小型完成車(2,300cc以下)の輸入解禁(7月3日施行)及び自動車輸入の関税引き下げやコンピュータの輸入関税の引き下げ(40%から5%へ),CPUパーツの輸入関税引き下げ(10%から1%へ)を行う等,機械製品の輸入関税を引き下げ,競争促進政策を実施している。

(3)付加価値税の導入

財政政策としては,7月にvAT(付加価値税)の導入が閣議決定され,7%の税率で92年1月から実施されている。これは,①現在タイの歳入基盤が間接税(消費税,事業税,関税等)への依存度が高い(80%)こと,②税制の簡素化が必要であること,といった理由から従来の輸出振興及び投資促進を目的としていた事業税に代わり,VATを導入しようというものである。

(4)金利の自由化

政府は,金融市場の競争促進のために商業銀行による貸出金利の規制(92年1月現在,19%が上限)を撤廃することとし,議会に法案を提出する予定である。


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