平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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II 1990~91年の主要国の政策動向

第8章 東  欧

5. ルーマニア

(1)財政政策

91年度予算は,91年3月初めに成立した。歳入は3,698億レイとなり,うち一般歳入が3,325億レイ,資本収益が12億レイ,特別歳入が373億レイとなっている。従来の国営企業からの上納金は,利潤税へと改められ,労働者への所得税も,国営企業の賃金総額への課税から,累進構造をもつ労働者個人への課税へと変更され,税負担の平等化が図られた。歳出は3,670億レイ,うち社会・文化関係が1,220億レイ,社会保障が970億レイなどとなっている。政府投資の対象が民間部門となった結果,従来予算の大きな部分を占めていた産業投資が削減された。各種補助金も厳しく制限されたため,社会保障関係は増額が可能となった。奨学金,身障者への手当,教育・厚生等も増額された。財政収支は赤字となるものの,その規模は対GDP比1.5%程度に抑制することを見込んでいる。

(2)金融政策

通貨面では,91年4月の価格自由化とともに対ドルレートが大幅に切り下げられた。8月には外貨交換所(外為市場)の設置によって,通貨交換が一部自由化され,レートは闇レートとほぼ同じレベルまで切り下がった。11月には,外貨準備の増大を図るため,中央銀行による外貨の強制的な買上が開始され,同時に,企業の商業銀行からの外貨購入が自由化され,個人に対しても,1人当たり年間1,000ドルの枠内で自由な外貨獲得が認められた。

4月には,新銀行法が制定された。これにより,銀行の設立には最低7億レイの資本が必要となり,当初資本金の半額をまず,ルーマニア国立銀行に供託し,その後6カ月毎に10%づつ上積み増資を続けて2年間で全額を支払う仕組みとなっている。また準備高は,まず年間総利益の20%を準備高としてスタートし,当初資本金と同水準となるまで積立ていく。その後は,当初資本の2倍を目処に10%の積み増しを続けていく。これがクリアされた後は,純利益からの積み増しに切り換えられる。設立主体としては,100%外国資本も認められている。銀行業務は,原則的にレウ建てで行われるが,外貨取引も中央銀行の許可を受ければ行うことができる。

また同じ4月には,中央銀行の独立性を規定した国立銀行法も成立している。

12月現在,政策基準金利は,商業銀行に対するリファイナンス・レートが年率18%となっており,商業銀行の貸出金利はこれを3~4%上回る。現状では月間9%程度のインフレとなっているため,実質金利はマイナスとなっている。

国営商業銀行4行は将来の民営化への準備として,まず株式会社へと改組されている。また,外国貿易銀行や農業銀行といった専門銀行は,商業銀行へと転換されている。

(3)その他


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