平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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II 1990~91年の主要国の政策動向

第6章 イギリス

4. その他

(1)民営化政策の進展

① 英地域配電会社の株式売却

90年12月11日の英地域配電会社12社の政府保有株式売却による民営化の実施に引き続き,91年3月12日には,パワージェン,ナショナル・パワー両国有電力会社の株式売却を実施した。両社の売却株式数は12億3千万株で,売却価格は1株175ペンス(最低購入株数は300株)に設定された。今回の売却株式数は全体の約60%であり,残りは93年4月以降になるもめとされている。

両社は,旧中央電力公社を解体して誕生した会社で,政府が全株式を保有していた。パワージェンは21の発電所を,ナショナル・パワーは40の発電所を有しているが,両社とも巨額の欠損を出しており,老朽発電所並びに人員の合理化を通じて,効率化を図っていく予定である。

② BTの政府持ち株放出

英電話会社ブリティシュ・テレコム(BT)は,84年に民営化されたが,まだ政府が48%の株式を保有しており,この残りの株式が91年12月9日にロンドン株式市場に上場された。放出株数は15億7500万株で,国内投資家には1株335ペンス,海外投資家には1株350ペンスの設定となり,国内投資家向けには全株式の66%が振り向けられた。なお,払い込みは,3回に分けて行われる予定で,今回は1株につき,国内投資家は110ペンス,海外投資家は125ペンスと設定された。

売却益は53億5千万ポンドと見られている。個人投資家の関心は高かったが,初日は126ペンス/株で引けた。

③ BRの民営化計画

サッチャー前政権以降,強力に進められできた民営化政策も現在では,郵便,石炭,国鉄といった従来なかなか手のつけにくかった分野を残すのみとな-った。メージャー政権においても民営化政策を更に押し進めるとしている。そのなかで,英国有鉄道(BR)については,検討が続けられてきた結果,営業形態及びネットワークに着目した分割民営化方式が固まったようである。正式には92年の早い段階で議会に計画案が提出される見込である。概要は以下のとおりである。

(2)緊急失業者対策

政府は,91年6月19日,200万人を突破した後も増加を続ける失業情勢に対処するために,特別補正予算による2年間の緊急失業対策を発表した。

同対策計画は,以下の3つの柱により構成されている。

(注)

(3)住宅市場対策

政府は,91年12月19日,低迷が続く英住宅市場の現状に対処するために,住宅取得時に支払う印紙税の一部免除を,同月20日から8か月間実施することを決定した。

住宅取得時にかかる印紙税は,土地と家屋を合わせた購入価格が3万ポンド以上の場合に,購入価格の1%が課税されるが,今回の措置は,課税対象となる購入価格の下限を一時的に,25万ポンドに引き上げるものである。政府は,この結果,住宅購入予定者の約90%が免除の対象となり,8か月間の減税規模は約4.4億ポンドになるものとみている。

イギリスの住宅市場は,着工,販売ともに不振が続いていることに加え,住宅ローンの支払いが困難になり購入した住宅等を手放すケースが,91年中に約8万件に達するなど,住宅を取り巻く環境は深刻化している。

(4)政府の経済見通し

政府は,予算案発表時及び秋季財政演説の際には,Industry Actに基づき経済見通しを発表することが義務づけられている。91年11月の秋季財政演説において発表された91年,92年の経済見通しを中心にまとめると以下のとおりとなる。

図表


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