平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第3章 ドイツ
ドイツは,戦後に天文学的インフレを経験した歴史をもっている。そのような経緯の下,ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)は,通貨価値の安定を重視する傾向が強く,インフレに対する警戒心が強い。金融政策は,88年7月以降,インフレ圧力の高まり等を背景に引き締め基調で運営されている。
ドイツ連銀は,隔週の木曜日こ定例理事会を開き,政策金利(公定歩合とロンバート・レート)の変更等を決定している。公定歩合は,手形再割引に適用されるため,優遇金利として,市中金利の下限となる。一方,ロンバート・レートとは,ドイツ連銀の市中銀行への債券担堡貸付金利のことであり,市中金利の上限となる。このようにドイツ連銀は,公定歩合を下限,ロンバート・レートを上限として,当局の政策スタンスを示し,その範囲内で主として売り戻し条件付債券買いオペ(後述)により市中金利を誘導し,金融調節を行っている。
最近の政策金利の動向は,以下の通りである。
売り戻し条件付債券買いオペは,機動的な流動性調整が可能であり,市中金利の誘導金利としての地位が確立している。入札の方法としては,3種類存在しており,①固定金利方式(連銀が入札金利を提示),②コンベンショナル方式(連銀が最低入札金利を公表せず,入札金利の高い順に応札),③ダッチ方式(連銀が最低入札金利を公表)がある。最近の実施状況は別表の通り。
ドイツ連銀は,88年以降,マネーサプライの管理手段をそれまでの中央銀行通貨量からM3(流通現金+要求払い預金+4年未満の定期預金+法定解約告知期間〔3か月〕付貯蓄預金)に変更した。88年以降のM3目標増加率と実績は以下の通りである。
なお92年の目標値「3.5~5.5%」は91年の目標値「3~5%」をやや上回っているが,これについてドイツ連銀は,金融緩和を意味するものではないとしている。