平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第2章 カナダ
84年のマルルーニ政権発足以降,カナダ政府は財政赤字削減を最優先にした政策運営を行っており,財政赤字はGDP比でみて,89年度まで縮小傾向にあった。しかし,景気悪化の影響から,90年度(90年4月-91年3月)には若干拡大し,91年度も目立った改善は見込まれていない。
① 91年度連邦政府予算(91年2月26日)
カナダ連邦政府は2月26日,91年度予算及び経済見通しを発表した。
91年度予算はカナダ経済の景気後退,湾岸危機の影響の下,これまでで最も厳しい予算編成であった。予算及び見通しは以下の通りである。
91年度政府予算の提出に伴い,ウィルソン蔵相は,91年2月26日,以下のような予算演説を行い,今後5年間の中期的な赤字削減措置を発表した。そのなかで具体的措置として,下記のような項目を掲げた。これにより,94年度に財政赤字から脱却という目標の達成を現実的なものとすることを意図している。
① 90年度予算から導入された「歳出抑制計画」(注1)を95年度予算まで延長する。
これにより,91~95年度で148億加ドルの削減効果が見込まれている。
② 歳入増加策
・たばこ税率の引き上げ(増税効果:91年度14億加ドル,92年度11億加ドル)
・失業保険料の引き上げ,(増税効果:91年度20億加ドル,92年度24億加ドル)
③ 財政赤字削減のための法律の提出
・一般歳出の総額の伸びを今後5か年間毎年3%に抑制する。
・国債削減基金を設け,GST(財貨・サービス税)の税収と特殊法人の民営化による収入全額が国債の削減に当てられることを明確にする。
④ 特殊法人の民営化
⑤ インフレ抑制の具休的目標の設定
・95年末にはインフレを2%に抑制することを目標として設定する。
⑥ その他
・閣僚俸給の凍結
・国家公務員給与の伸びを3%以内に抑制等
ただし,景気への配盧も必要であったことから,91年度予算では合計75億加ドルを一時的経費として計上した。その内訳は以下の通りである。
① 失業者対策費30億ドル
② 老齢者対策費16億ドル
③ 国際穀物価格の低迷により困難な状況にある農家対策として13億ドル
④ 湾岸対策として国防費の追加6億ドル
(i)歳出抑制の例外項目・個人への社会保障給付(年金,家族手当,失業給付)・国防費・財政基盤の弱い州(オンタリオ,ブリテイシュ・コロンビア,アルバータ州以外)への交付金等
(ii)伸び率を5%に抑制する経費
・オンタリオ,ブリテイシュ・コロンビア,アルバータ州への交付金等
(iii)伸び率を3%に抑制する経費
・科学技術,ODA等
(iv)減額する経費
・住宅抵当公社への交付金等