平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第1章 アメリカ
90年11月に,95年度までの5年間にわたり約5,000億ドルの赤字を削減する包括財政調整法が成立した。91年2月にブッシュ政権が提出した92年度予算案もこれに沿って歳出の抑制を進めている。しかし,財政赤字は景気後退の影響,預金保険金融機関の整理費用の増大等から拡大しており,91年度には2,687億ドルと過去最高となった。他方,91年秋以降,景気の先行きに対する懸念が高まる中,財政面での対応を求める声が高まった。91年10月には国防費の削減と合わせて,主に中間所得者層を対象とした減税を行うべきである,という論議が議会で活発となった。
90年9月30日,5月から続けられてきた政府・議会指導者による予算サミットは,91年度~95年度の5年間で5,000億ドル,91年度には401億ドルの赤字を削減することで合意に達した。
10月5日,予算サミットの合意を盛り込んだ予算決議案は,医療給付額の大幅削減及びガソリン税等の増税を盛り込んでいることから,民主,共和両党の反発にあい,下院本会議で否決された。修正された予算決議案が8日下院,9日上院で可決された。
27日,上下両院本会議で,今後5年間で4,919億ドルの赤字削減を行う内容を盛り込んだ包括財政調整法案が可決された(参考1)。
11月5日,包括財政調整法案がブッシュ大統領の署名により成立した。
12月6日,CBO(議会予算局)は今後5年間の財政赤字見通しを公表した。
91年2月4日,ブッシュ大統領は,92年度予算教書を議会に提出した。
7月15日,アメリカ政府は91年度の年央改訂見通しを発表し,91年度から96年度の財政収支及び経済見通しを明らかにした。
8月15日,アメリカ議会予算局(CBO)は,財政赤字見通し,経済見通し及び改訂財政赤字削減報告を発表した。
20日,行政管理局(OMB)は,改訂財政赤字削減報告を発表した。
10月中旬 議会で減税論議が起きた(参考2)。
11月28日,議会が休会入りし,91年の審議は終了した。
ブッシュ大統領は,91年2月4日,92年度予算教書を議会に提出した。本予算は,90年秋に成立した包括財政調整法の内容に沿うものであり,長期の経済成長を可能にするための潜在力を高めるとともに,アメリカの提供する機会を活用しうるようにする政策に優先順位を与えている。また,連邦財政支出の全体の伸びをインフレ率以下の約2.6%に抑えており,財政の長期的均衡の達成に資するものとなっている。国内政策では,①教育と人的資本への投資,②病気予防と次世代への投資,③R&Dと人類フロンティアへの投資,④交通インフラ整備への投資,⑤アメリカの遺産と環境保護への投資,⑥選択と機会,⑦麻薬と犯罪防止への投資,に重点を置いている。また,貯蓄を促すために非課税家計貯蓄口座の創設,個人退職年金口座の拡充(第一住宅購入のための引落に対する課徴金の免除),キャピタル・ゲイン課税の減税等税制によるインセンティヴを与えることを昨年に引き続き提案している。
議会での審議の結果,予算教書で示された重要政策のうち,交通インフラ整備への投資は陸上交通網整備法案が成立(91年12月)したことにより実現されたものの,キャピタル・ゲイン課税の減税,その他貯蓄促進策(個入退職年金口座の拡充等),研究開発費の税額控除の恒久化等の重要政策は議会の承認が得られず,実現していない。
アメリカ政府は7月15日,91年度の年央改訂見通しを発表し,91年度から96年度の財政収支及びその前提となる経済見通しを明らかにした。主要計数は次のとおり。
アメリカ議会予算局(CBO)は,8月15日に財政収支見通し,経済見通しを発表した。主要計数は次のとおり。
10月1日から予算が92年度入りしたが,10月1日現在で裁量的経費の歳出に際して必要な13法案のうち2法案しか成立していなかったため,政府は暫定予算を成立させた。これにより,90年度予算と同水準の支出をすることが可能となった。
11月28日こ議会が休会入りし91年の審議が終了した。審議の結果,13法案のうち対外関係費を除く12法案が成立し,歳出が可能となった。なお,対外関係費については暫定予算により92年3月まで90年度予算と同水準の支出をすることが可能となっている。
なお,個別の法律により支出が義務づけられている義務的経費については,議決は要しない。歳入については,現行の歳入法に基づき執行されるため,税制の変更等を行わない場合には議決は要しない。