平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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I 世界経済白書本編(要旨)

第4章 市場経済の拡大と再編

第4節 EC統合と競争政策

(統合の深化と拡大)

EC統合は深化と拡大の両面で進んでいる。深化の面では,92年末の市場統合をめざして域内の非関税障壁等の除去が進んでいるが,各国間の合意が得られていない分野が残っている。経済・通貨統合は第一段階(ERMへの加入がほぼ完了,資本移動の自由化達成)に入ったが,第二段階以降(欧州中央銀行の創設,単一通貨への移行)については,経済パフォーマンスの収れんが遅れている国の参加を事実上遅らせるという案が浮上している。政治統合については,外交・防衛政策の一元化やEC議会の権限強化を巡る対立のほか,湾岸危機での対応における各国の足並みの乱れなどから,問題の難しさが再認識されるようになっている。拡大の面ではEFTA(欧州自由貿易連合)との間でのEEA(欧州経済領域)設立交渉が91年10月にようやく合意に至った。EFTA加盟国のうちオーストリア,スウェーデンは独自にECへの加盟申請を行っている。東欧三カ国(ポーランド,ハンガリー,チェコ・スロバキア)との連合協定(いわゆる準加盟)交渉は農業等の市場開放を巡って対立が続いている。

このように,ECは従来のように深化を優先しつつ,拡大の要請への対応を迫られている。

(経済パフォーマンスの収れん)

EC各国の経済パフォーマンスの収れん状況をみると,インフレ率の面では,フランスがドイツの水準を下回るまで低下し,イギリスも最近急速に低下しているが,イタリア,スペイン等は依然高いインフレを続けている。財政赤字の面では,フランスの赤字が低水準である一方,イタリアで依然高水準の赤字が続いているほか,ドイツ,イギリスでこのところ赤字が増加している。このようにEC各国の経済パフォーマンスの収れんは十分ではない。このことは,経済・通貨統合の今後の進め方について慎重論(経済パフォーマンスが収れんした国から順次,経済・通貨統合に参加するという考え方)を力づけている。

第4-4-1図 EC主要国のインフレ率の推移

(競争促進のための環境整備)

市楊統合がその所期の成果をあげるためには,拡大された市場の下で十分な競争がなされる必要がある。このため,域内各国間の税制の相違等の非関税障壁等の撤廃,域内企業に対する国家補助金,M&Aによる市場の寡占に対する規制が必要となる。また,国営企業の民営化も市場の競争条件を改善するものである。いずれの課題についてもECレベル,各国レベルでの対応が進んでいる。

域外国からめ輸入,直接投資の受入れも域内の競争を促進し,市場統合のメリットを引き出す上で重要な要件である。ただし,この点では,日本の半導体等のハイテク製品にみられるような輸入制限,アンチ・ダンピング課税,ローカル・コンテンツなどにより域内企業を域外企業との競争から隔離する動きがみられる。今後,ECが市場統合を進める過程で域外企業に対する種々の差別的な障壁を撤廃することが望まれる。


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