平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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I 世界経済白書本編(要旨)

第4章 市場経済の拡大と再編

第3節 南北アメリカ大陸における市場機能の活用

(米墨加自由貿易協定)

91年6月に米墨加の間で自由貿易協定締結のための交渉か開始された。協定が成立すれば,三国の総人口で3.6億人(90年)というEC市場(3.2億人)を上回る規模の自由市場が生まれることになる。ただしアメリカ,カナダの関税は低く,メキシコの関税も最近はかなり下がっていることや,メキシコのマキラドーラ(保税加工業)にアメリカの製造業がすでに相当進出していることからみて,既存の貿易,投資パターンが大きく変わるとは考えにくい。ただし,アメリカのアウト・ソーシング型(外部調達型)の直接投資がアジアからメキシコにシフトする可能性は考えられる。

第三国との関係では,メキシコ経由の対米輸出を規制するため,ローカル・コンテンツの基準を厳しくすることがアメリカを中心に議論されているが,ブロック化につながる可能性もあることから慎重な検討を求める必要がある。

第4-2-8図 中国とソ連の穀物生産と生産性の動向

第4-2-12図 中国・ソ連の輸出入動向と輸出の対GNP比

第4-3-1表 米墨加3か国の産業構造

(中南米諸国の市場志向型経済改革)

中南米諸国では,累積債務問題への対応を進めるなかで,従来の輸入代替戦略,公営部門の役割重視という政策からの転換を図り,貿易の自由化,国営企業の民営化等に取り組むようになっている。特に,メキシコでは,マクロ経済の安定化を図るとともに,国立銀行の民営化,外資の導入を進めた結果,海外からの直接投資も増加している。また,中南米では近隣諸国間で貿易拡大を目指す自由貿易地域の設立構想(南米共同市場,中米・墨自由貿易圏等)が相次いでいる。経済力の乏しい途上国間での協力体制であることや,各国の産業構造は必ずしも相互補完的ではないことから,あまり大きな効果は期待できないものの,各国の政策転換をより確かなものとする意義は認められる。


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