平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第11章 中  国:経済引締め策の一部見直しから回復に向かう

5. 消費動向

企業労働者賃金総額は,84年以降高い伸びをみせ,88年は前年比23.1%増となったが,89年は賃金抑制策から徐々に伸びが鈍化し,年全体での物価上昇分を除いた実質賃金の伸びはマイナスとなった(第11-1表)。90年に入ると′,伸びは依然低いものの再び増加傾向となり,4~6月期前年同期比11.0%増の後,7~9月期同12.6%増となっている。特に外資,個人企業では大幅な賃上げが行われている(1~8月期同40%増)。また,実質賃金をみると,物価上昇率の鎮静化から1~9月期同9.5%の増加となっている。

農民一人当たり収入は,85年以降副産物の価格自由化等が行われたことから上昇し,88年も前年比で17.8%の増加となったが,89年は同10.4%増と鈍化した。90年は,630元となる見込みであるが,前年比でみると(89年は602元)伸びは更に鈍化しており,都市部との所得格差は拡大する方向にある。

商品小売総額は,88年は前年比27,8%増と過熱気味に増加したが,引締め策の影響から89年に入り徐々に鈍化し,年全体では同8.9%増となった(第11-1表)。90年に入ると,1~3月期前年同期比3.1%減,4~6月期同0.8%減の後,7~9月期同2.2%増と年央より回復に向かっているものの,農村部で依然消費が不振なことが影響し,緩慢な伸びとなっている。

小売物価上昇率は,88年前年比18.5%と高まったが,89年下半期以降消費の落ち込みに加え,農産物価格の引下げ(政府の価格補助金増加)等から鎮静化している(第11-1表)。90年に入っても,食料品価格の安定が続き,上半期前年同期比3.2%の後,7月前年同月比0.7%,8月同0.4%と上昇率が大幅に鈍化している。政府は今後もこの傾向は変わらないとし,90年は前年比1.8%になると見込んでいる。

中国人民銀行(中央銀行)は,停滞した経済の刺激策として,90年3,4月に貸出金利及び一部の預金金利を平均1.26%引き下げた。しかし,依然として生産の伸び悩みがみられることから,8月にも貸出金利,預金金利を平均1.08%引き下げている。通貨供給量(M2)は,89年は金融引締め策の下,前年比18.7%増と鈍化した。90年は1~3月期前年同期比23.4%増となった後も,金利の引下げから企業への貸付が増大し,7月以降供給量が急激に増加している。

第11-1図 中国主要経済指標の動向


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