平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第11章 中  国:経済引締め策の一部見直しから回復に向かう

3. 鉱工業生産

鉱工業生産総額(実質)をみると,87,88年は各々前年比17.7%増,;0.8%増と過熱状態が続いたが,89年は2月に貸出し金利を引き上げる等,政府が緊縮政策をとったことから年初より急激に伸びが鈍化した(第11-1表)。特に軽工業部門での影響が大きく(10~12月期前年同期比0.9%減),全体でも7~9月期前年同期比5.4%増,10~12月期同1.1%増と大幅に鈍化した。90年も,1~3月期で前年同期比ほぼ横ばいとなり更に鈍化したが,その後は,政府が生産刺激策として融資拡大,貸出金利引き下げ(3月に平均1.26%引下げ)等の措置をとったことから,4~6月期同4.1%増,7~9月期同5.0%増と緩やかに増加し,10月,11月は各々前年同月比12.7%増,同15.0%増と高い伸びをみせている。

生産主体別でみると,90年上半期は,村営企業で前年同期比5.8%増と増加し,合弁企業等で40%近い伸びをみせる生産が大幅に増加し,順調に回復している反面,鉱工業生産総額の3分の2を占める国営企業では同0.5%増の微増に止まり,依然停滞から回復できずにいる。また,地域別でみると,広東(90年1~9月期前年同期比12.1%増),福建(同7.3%増)省等の沿海部で高い伸びがみられ,特に広東省の深しん,珠海といった経済特区では各々90年1~9月期前年同期比40.5%増,同26.6%増と急増している。他方で黒竜江(同1.2%減),吉林(同0.5%減)省等の東北部では従来生産の中心となっていた重工業が原材料,エネルギー不足,及び消費減退から依然生産不振となっているため,減少傾向が続いている。

第11-3-表 主要工業品の生産状況

品目別でみると,90年1~9月期は,工業生産の伸びが依然低いことから,石炭前年同期比3.4%増,石油同0.8%増,天然ガス同0.9%増とエネルギー分野で鈍化がみられる(第11-3表)。また,カラーテレビ(同11.6%減),冷蔵庫(同35.2%減),洗濯機(同31.1%減)等の家電機械の生産が需要の鈍化から減少している。他方,原材料生産は,政府が投資を優先的に投入した結果,粗鋼が同8.7%増,鋼材同6.2%増と増加している。


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