平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第10章 中国:中国経済は厳しい情勢へ
企業労働者賃金総額は,84~85年以降高い伸びを示しており,86年前年比20.0%増,87年には賃金抑制の方針が出されたにもかかわらず前年比13.3%増となり,88年には88年央に物価上昇補填のための賃金引き上げが行われたことに伴い同22.1%増と伸び率が高まった。89年にはいって,1~3月期前年同期比24.6%増,4~6月期同15.5%増,7~9月期同11.6%増,10月前年同月比4.4%増と賃金抑制策もあって伸び率が鈍化している。
実質賃金の動きをみると,88年は,前年にくらべ増加したが,88年第4四半期から,小売物価上昇率より賃金の上昇率が低く実質賃金は目減りしている(第10-1図)。
農民一人当たり収入は,85年に副産物の価格自由化などが行われたこともあって増加し,85年前年比11.9%増,86年同6.6%増,87年同9.2%増,88年同17.8%増となった。
商品小売総額は,88年には前年比27.8%増と過熱ぎみに増加したが,89年にはいって,1~3月期前年同期比21.3%増,4~6月期同15.4%増と経済調整策の影響から徐々に鈍化した。89年下半期にはいると,6月以降の経済調整策の徹底化から7~9月期同2.6%増,10月同0.3%減,11月同0.9%減と,消費は大幅に鈍化している。
小売物価上昇率は,88年に前年比18.5%となった後,89年にはいって1~3月期前年同期比27.1%,4~6月期同23.9%と大幅な上昇が続いたが,下半期にはいり7~9月期同15.7%,10月同8.7%,11月同5.9%と伸び率が鈍化しているが,89年通年では17.8%の上昇で,「前年の伸び(18.5%)より明らかに下回らせる」という政府目標は達成できなかった(前掲10-1表)。
中国人民銀行(中央銀行)は,経済調整策の一環として,88年9月に続いて89年2月1日から,預金金利(一年物個人定期預金)を従来の8.64%から11.34%に引き上げ,流動資金貸出金利を9.0%から11.34%に引き上げる等の措置を採った。通貨供給量(M2)は,88年前年比20.7%増の後,89年1~3月期前年同期比18.3%増,4~6月期同15.7%増,7~9月期同13.4%増と伸びを鈍化させており,88年後半からの2度にわたる貸出金利引き上げ(88年9月,89年2月)が効果を示している。