平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第10章 中国:中国経済は厳しい情勢へ
貿易動向(通関,ドル・ベース)をみると,輸出は89年には前年比10.4%増,輸入は同7.0%増となり,89年の貿易収支赤字は66億ドルと,88年の77.1億ドルから縮小した。89年上半期は,輸出が前年同期比6.5%増,輸入が26.7%増となり,貿易収支赤字は88年上半期の12,.2億ドルから57.8億ドルに大幅に拡大した。下半期に入って,7~11月期に輸出が16.5%増と大きく伸びたのに対して,輸入は外貨準備高悪化防止のため輸入抑制策をとっているため0.5%減と鈍化し,貿易収支赤字は8.3億ドル(前年同期42.5億ドル)と大きく縮小している。
品目別輸出をみると,原料製品は88年前年比22.4%増から89年1~9月期前年同期比6.0%増と国内の原料不足から伸び率が鈍化している。特に,鉄鋼は,88年秋以降輸出関税付加など,輸出制限が行われたため,88年前年比138.2%増から89年1~9月期前年同期比23.8%減と大きく落ち込んでいる。機械・輸送機器は88年前年比59.0%増,89年1~9月期前年同期比41.3%増と,順調な伸びが続いている。雑製品も88年前年比30.0%増,89年1~9月期前年同期比27.0%増と順調な伸びが続いている。品目別の輸入をみると,国内の原料不足から原料製品が88年同7.0%増から89年1~9月期同35.4%増と大きく伸びている。また,穀物及び加工品の輸入が88年前年比9.9%増から89年1月~9月同75.6%増と急増している(第10-5表)。
89年1~9月期の地域別貿易動向をみると,中継貿易の拡大を反映して香港・マカオに対する輸出が伸びたが,対日・対EC向け輸出は横ばいであった。中国貿易のうち輸出の43%,輸入の22%を占める香港・マカオとの貿易は,輸出が前年同期比22.8%増,輸入が同9.1%増となり,貿易収支黒字は前年同期の43.2億ドルから64.5億ドルに拡大した。対日貿易では,輸出が前年同期比3.6%増とほぼ横ばいだったのに対し,輸入は同9.8%増と順調に伸びた結果,貿易収支赤字は21.0億ドルと前年同期の16.0億ドルから拡大した。対EC貿易では,輸出が前年同期比0.6%増と横ばいだったが,輸入が同27.5%増と大きく伸び,貿易収支赤字は33.5億ドルと前年同期の19.2億ドルがら拡大した。対米貿易では,輸出は前年同期比29.8%増と大きく伸びた,一方輸入は化学肥料,人造樹脂など化学材料中心に同26.2%増となり,貿易収支赤字は24.0億ドルと前年同期の19.8億ドルから拡大した(第10-6表)。