平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第5章 フランス:内需を中心に景気拡大続く
(89年貿易収支は大幅に悪化)
輸出(FOB,季調値)は,88年は前期比12.2%増(9,976億フラン)と大幅に拡大し,89年に入って1~3月期は,同9.1%増と拡大したが,4~6月期は同横ばい,7~9月期は同0.4%減,10月前月比1.2%減と伸び悩んだが,11月は,同3.0%増と持ち直した(第5-5図)。部門別の動向をみると1~3月期には航空機,乗用車を中心とした輸送機器部門で前期比12.9%と大幅な増加となったほか,農産物部門で同11.4%増,中間財部門で同9.2%増,資本財部門で同8.5%増と全般的に好調であった。4~6月期は農産物,資本財部門で伸びが鈍化した。7~9月期には,資本財部門は,前期比5.0%増となったものの,農産物部門同3.3%減,中間財部門同3.9%減,輸送機器部門同2.6%減と全般的に伸び悩んだ。国別の動きをみると,1~3月期には,全輸出の約6割を占めるEC域内向けを中心に,特にスペイン,オランダ向けが増加したものの,4~6月期には,全般的に伸びが鈍化し,オランダ,アメリカ等では減少した。7~9月期は,日本,イタリア,スペイン向けが微増となったほかは,アメリカが前期比2.5%減,イギリスが同9.7%減,ドイツが同2.0%減となる等全般的に不調であった。
輸入(FOB,季調値)の動きをみると,88年11.9%増(10,304億フラン)の後,89年に入って,1~3月期前期比5.7%増,4~6月期同3.4%増となった後,7~9月期同0.1%増と伸びがやや鈍化した。その後前月比10.1%増と大幅に増加したが,11月は同3.1%減となっている。部門別では,1~3月期には好調な設備投資を背景に,資本財が大幅な増加を示したほか,個人消費の好調に伴い,中間財,消費財も増加した。4~6月期には,個人消費の伸びの鈍化に伴い消費財は横ばいとなったものの,依然好調な設備投資により,資本財は引き続き増加した。7~9月期は工業品部門は,中間財,消費財を中心に前期比0.8%増となったものの,エネルギー,農産物部門は減少した。国別では,1~3月期は,イギリス,スペイン等が増加した後,4~6月期には,アメリカ,オランダ,イギリスからの増加がみられた。7~9月期は,西ドイツ,日本が増加,逆にアメリカは減少した。
貿易収支(通関ベース)の推移をみると,88年は,87年に引き続き327億フランと大幅な赤字となった後,89年は88年を上回るペースで赤字が拡大しており,1~11月までの累計で436億フランの赤字と前年同期の279億フランを大幅に上回るとともに,9月発表の政府見通し(405億フラン)をも上回った。部門別では,乗用車を中心とする輸送機器部門では黒字を続けているが,資本財部門では88年4~6月期に赤字に転じ,89年に入っても,活発な設備投資により,赤字幅は拡大している。国別でみると,イギリスに対しては黒字となっているが,西ドイツに対しては,大幅な赤字を記録しており,1~9月でみると,全体の赤字の約52%と大きな割合を占めている。また,89年に入り,アメリカに対する赤字が増加している。なお,89年全体の赤字については,ベルゴボワ蔵相は500億フラン程度になるとの見通しを明らかにしている。
(経常収支は赤字基調)
経常収支の動きをみると,88年に253億フランの赤字となった後,89年も,貿易外収支のなかの旅行収支が1~6月累計で178億フラン(前年同期159億フラン)と大幅黒字となっているものの,前述のように貿易収支の悪化が続いており,1~3月期71億フランの赤字,4~6月期56億フランの赤字と赤字基調となっている。長期資本収支は,国内への証券投資が増加し,ECの市場統合を睨んだ海外からの直接投資が増加しているものの,フランス企業の活発な海外直接投資及び対外貸付の増加により,赤字幅は拡大している。