平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第4章 西ドイツ:80年代最高の経済成長
商品輸出額は,87年前年比0.2%増の後,88年はマルク相場の安定や世界的な設備投資の増加に伴って,同7.7%増と大幅に増加した。地域別(第4-5図)ではEC諸国向けの大幅増(1~8月の前年同期比17.6%増)をはじめ,途上国向け(同24.2%増),OPEC諸国向け(同15.,5%増),共産圏向け(同19.9%増)といずれも大幅に増加し,88年に前年比で減少していたアメリカ向けも増加に転じた(同9.7%増)。財別では,資本財の伸びが著しく,89年1~8月前年同期比で17.8%増加している。
商品輸入額も,87年前年比1.0%減の後,88年同7.4%増と大幅に伸びた。地域別ではアメリカからの輸入が急増(1~8月の前年同期比34.0%増)したのをはじめ,EC諸国からの輸入も大きく伸びた(同15.7%増)。
東西ドイツ間貿易は,89年上半期の前年同期比で7%増加し,72億マルクとなった。東ドイツへの輸出は同8.6%増加し,34億マルクとなり,資本財輸出は伸びたものの消費財では減少した。東ドイツからの輸入は同5.6%増加し,38億マルクとなった。
貿易収支黒字は,87年の1,177億マルクから88年には1,280億マルクヘ大幅に増加し,史上最高を更新した。89年に入っても上半期に703億マルク(前年同期:592億マルク)に拡大した。経常収支黒字は,87年の812億マルクの後,88年には852億マルクヘ拡大した。89年1~9月は,757億マルクと前年同期(571億マルク)を大きく上回っている。
また,87年後半以降,対米金利差の拡大や利子源泉課税の導入決定(87年10月)を主因として,西ドイツからの長期資本の流出が続き,長期資本収支の赤字額は87年233億マルク,88年849億マルクと拡大した。89年1月から利子源泉課税が実施されたことにより,長期資本流出の動きは加速し,1~3月期は過去最高の331億マルクの赤字(前年同期:239億マルクの赤字)を記録した。その後5月に,利子源泉課税を7月1日から廃止することを閣議決定したことをうけて入超に転じ,5~7月には18億マルクの流入超となった。しかし8月以降は再び出超に転じている。
西ドイツの旅行収支は,88年に165.9億ドルの赤字となり,日本の同157.9億ドルを上回り世界一であったが,89年上半期では日本が90.5億ドル,西ドイツが68.7億ドルと逆転した。
1985年以降大幅な経常収支黒字が続いていることを反映して,対外純資産は85年末の1,254億マルクから88年末には3,670億マルク(2,060億ドル),さらに89年6月末では4,268億マルクに拡大した。このため投資収益収支の黒字も89年1~8月で120億マルク(前年同期:45億マルク,88年計:80億マルク)に拡大した(第4-6図)。