平成元年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1988~89年の主要国経済

第4章 西ドイツ:80年代最高の経済成長

4. 物価・賃金

(1) 物価は年央にかけて高まった後,総じて落ち着き

物価動向をみると,86年に石油価格の下落をうけて大幅に下落した後,87年,88年は同要因の剥落とともに緩やかに上昇した。しかし,国際的にみると,物価上昇率の低い国となっている。

輸入物価についてみると(第4-4図),88年はマルク相場の下落により,年央にかけて上昇したがその後落ち着きを取り戻し,前年比1.3%の上昇となった。89年は年初からマルクが弱含み,原油価格が高めに推移したことにより,4~6月期前年同期比6.6%の上昇,7~9月期同3.2%の上昇となった。

工業生産者価格は,88年は基礎財の価格上昇を主因に前年比1.3%上昇した。

89年に入ると,年初の個別消費税の引き上げ・導入(ガソリン,ガス,タバコ等)の影響で,前年同期比3%台の伸びとなったが年央以降は落ち着いた動きとなった。

消費者物価も88年は原油価格の低下等により同1.2%の上昇と小幅な伸びにとどまった。89年初には,マルク安,個別消費税の引き上げ・導入,原油価格の上昇等から上昇率が高まったが,その後,マルクの安定,原油価格の低下等により,物価は上昇率が鈍化し,総じて落ち着いている。

(2) 賃上げよりも時短

高水準の失業が続くなかで,労働組合は,賃上げよりも労働時間の短縮による雇用拡大を目指す路線をとっており,長期間の労働協約を締結して段階的に労働時間の削減を図っている。西ドイツ最大の労働組合,金属労組の協約は,89年4月~90年3月に,2.5%の賃上げと週37.5時間→37時間,となっている。

IFO経済研究所の調査によると,従来に比べ所定労働時間が3時間短縮されたことに伴い,多くの事業所が操業時間を短縮,それと同時に熟練労働者の不足が表面化している。操業時間に関しては,交代制を採用する事業所を除くと現在の平均は週38時間で,過去5年間に週操業時間が増加した事業所の割合は10%,減少が67%となっており,今後,延長計画があるのは9%で,35%は短縮を計画しているとされている。90年春にかけて本格化する労働協約改定交渉の行方が注目される。


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