平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第4章 西ドイツ:80年代最高の経済成長
鉱工業生産は,88年に前年比3.6%増と85年(同3.6%増)以来の高い伸びとなった。89年に入ると,1~3月期に暖冬の影響で建設業が前期比21.9%増と大幅に増加したことから総合で同2.4%増となった後,4~6月期にはその反動で前期比0.8%減,7~9月期には鉱業,エネルギー部門,製造業,建設業の全てが前期比でプラスになったため,同2.1%増と比較的高い伸びを示した。
OECDの調査によれば,製造業稼働率は89年に入って更に高まりを見せ,3月の88.3%から,6月に89.1%,9月には89.6%へ上昇し,70年以来最高の水準に達している(第4-2図)。
製造業新規受注数量は,88年には総合で前年比9.8%増と79年(同10.9%増)以来の高い伸びとなった(第4-3図)。89年に入ってからも1~3月期前期比10.8%増,4~6月期同15.7%増と高い水準を維持している。国内向けでは88年初以降比較的安定した伸びとなっており,特に89年に入ってからは資本財が1~3月期前期比3.1%増,4~6月期同4.9%増と受注増の中心的な役割を果たした。一方輸出向けでは,他の西欧諸国による西ドイツの資本財に対する需要が強いこと及び88年春以降のマルク相場の下落等を受けて,87年初以降の増加傾向が続いている。
雇用情勢は依然厳しいものの,景気拡大が続くなかで徐々に改善している。
失業者数は,88年には224.2万人と前年に比べ1.3万人増加したが,季節調整値でみると,88年4~6月期の226.7万人以降は減少が続き89年7~9月期には201.7万人となった。失業率も88年4~6月期の8.9%から89年7~9月期には7.8%へ低下した。しかしその後,東ドイツからの移民流入の急増等により,失業者数の増加や失業率の上昇が見込まれている。
また,地域別失業率をみると(第4-3表),北部の州(シュレスヴイヒ=ホルシュタイン,ハンブルク,ブレーメン,ニーダーザクセン,ノルトライン=ヴェストファーレン)では造船や石炭,鉄鋼業等の重厚長大産業が多く,失業率は83年に上昇した後,あまり改善が進まず横ばいで推移している。一方,南部の州(ラインラント=プファルツ,ザールラント,バーデン=ヴュルテンベルク,バイエルン)では電気技術工業,データ処理装置等のハイテク産業が発達しており,失業率は83年に高まりをみせた後,次第に改善している。このように北部と南部では失業率に格差がみられる。
89年夏以降,東欧諸国における民主化の動きの下,東ドイツから西ドイツヘ大量の人口移動が起こった。東ドイツからの移住者は10月に5.7万人増加し,1月から10月までの累計では16.7万人に及んでいる。東ドイツからの移住者の失業の特徴としては,製造業での失業率が29%と高く,地域別失業率では,ノルトライン=ヴェストファーレン21%,バイエルン18%,ベルリン14%となっている(89年11月現在)。