平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第2章 カナダ:89年に入り,経済拡大はやや減速
貿易動向(国際収支ベース)をみると,88年の輸出は,食料品(主に小麦・前年比41.5%増),アルミ,木材等の中間財の好調を背景に,前年比8.9%増となった(第2-3表)。しかし,アメリカの景気拡大が緩やかとなり,乗用車販売も伸び悩んだことから,石油輸出は大幅減,乗用車部品輸出も減少した。一方輸入は,原材料,乗用車が減少したものの,その他は概ね増加し,なかでも設備投資関連財(工業用機械,通信機器)は,前年比20%以上増加した。そのため貿易収支黒字は,98.1億加ドルとなり,前年に比べ,13.5億加ドル減少した。
89年に入ると,輸出は,乗用車関連の低迷や,穀物輸出の減少が影響し,1~9月期前年同期比2.2%増と緩やかな増加にとどまったものの,輸入は,設備投資財需要が依然強いため,1~9月期同5.9%増となった。その結果,貿易収支黒字は,前年同期より33.8億加ドル減少し,45,3億加ドルとなっている。
経常収支赤字をみると,88年は貿易収支の悪化を主因に,赤字幅が拡大し,103.2億加ドルとなった(第2-4表)。89年に入ると,貿易収支黒字幅の一層の縮小から,1~9月期138.2億加ドルの赤字と急拡大している。
また,貿易外収支赤字は,88年は前年と比べ,やや改善したものの,内訳をみると,金利高により投資収支赤字が拡大する一方で,香港からの移民送金の増加等から,移転収支の黒字は増加した。資本収支は,87年に大きく増加したカナダへの直接投資と株式投資が,88年には,87年の株価大幅下落等から伸び悩む一方,カナダ国内金利高の影響から,債券への資金流入が大幅に増加している。