昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第11章 ソ連:88年,経済はやや回復へ
第10次計画(1976~80年)以降,ソ連では国民生活の向上を目標に掲げ,消費財生産の伸びが生産財生産の伸びを上回る目標設定がなされている。しかしながら,従来の重工業優先策や軍事費の重圧から発展が阻害されてきた民生部門は,改善がみられるものの,欧米諸国と比べればその水準は低い。
雇用動向をみると,80年代以降労働力の伸び悩みがみられるが,労働者・事務職員数は,88年1~9月期前年同期比で0.6%減(87年は前年比0.4%増)とマイナスに転した(以下,前掲第11-1表参照)。したがって,労働生産性の上昇,労働力の産業間・地域間での適正な配分が,緊急かつ不可欠となってきている。
所得面では,88年1~9月期前年同期比で,労働者・事務職員の月平均賃金は6.7%増(87年は前年比3.0%増),コルホーズ農民の労働報酬は5.0%増(同2.5%増)といずれも高い伸びを示した。一方,支出面をみると,①国営商店の慢性的品不足のため価格の高い(国営商店の2~3倍程度といわれる)自由市場や協同組合商店での購入に頼る部分が大きいこと,②食料品,家電製品,衣料品等の生活必需品を中心にインフレが進んでいること,などが国民の消費生活を圧迫し始めている。インフレ進行の理由としては,企業の独立採算制移行に伴い,協同組合企業・商店(小規模経営,個人経営の企業・商店)の高値に引きずられて,利益増や赤字転嫁のための製品価格引上げが相次いだことが挙げられている。
国営・協同組合商業の小売売上高は88年1~9月期前年同期比で6.6%増(87年は前年比2.6%増),生活サービス供与高(国民への有料サービス高)は同14.6%増(同8.1%増)といずれも高水準の伸びを示している。