昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第11章 ソ連:88年,経済はやや回復へ

2. 生産動向

(1)工  業

工業総生産は,88年1~9月期前年同期比4.3%増と,87年の前年実績値比3.8%増に比べ,やや高い伸び率を示している(第11-1表)。これは,87年の生産が,天候の影響による流通面での支障や工業製品の品質検査厳格化に伴う不良品の続出等から低調であったため,その反動によるところが大きいとみられる(付注11-7)。

財の種類別に88年1~9月期実績を前年同期比でみると,生産財3.9%増,消費財5.4%増と,いずれも87年の前年実績比伸び率を上回る伸びを達成した。

なお,従来より掲げてきた消費財生産の伸びを生産財生産の伸びよりも高めるという目標は,88年になって初めてその実績が示されたことになり,89年計画においても生産財2.5%増に対して消費財6.0%増と消費財重視の計画を打ち出している。

部門別にみると(第11-2表),燃料・エネルギー部門は,1~9月期前年同期比で電力2.0%増,原油0.3%増,天然ガス6.0%増,石炭2.0%増で,いずれも計画を達成した。機械工業部門は,産業全般の技術再装備を促すものとしてソ連政府がその生産に力を入れているが,NC工作機械,医療機械,計算機などの新技術を比較的多く装備した機械は順調であり,一方,トラクター,石油設備機器等は計画未達成(それぞれ95%,97%の達成率)となっている。化学工業部門,建設部門はおおむね計画を達成し,また,食品工業部門も食肉,乳製品等は,絶対量ではまだ不足とされながらも同期間の計画は達成した。耐久消費財部門ではミシン(達成率90%),ラジオ(同93%),テープレコーダー(同93%),洗濯機(同95%),テレビ(同98%)等,計画未達成のものが多くみられ,国民の日常生活向上に目に見える形で貢献するこれら消費財の供給は,まだ十分ではないとみられる。

(2)農  業

近年の農業総生産の動向をみると(第11-3表),好調であった86年(前年比5.1%増)に対して,87年は寒波の影響もあって一転して不振となり(前年比0.2%増),88年も干ばつから穀物等を中心に伸び悩み.が懸念されている。

穀物生産は,86年に2億1010万トンと78年以来初めて2億トン台を回復し,,87年も2億1130万トンで引き続き順調な生産を達成した。しかし,88年には一部の穀倉地帯での干ばつから穀物生産が不調に終わる可能性も懸念されている(アメリカ農務省88年12月発表資料では,2億トンと予想)。一方,需要面では,国民の高まる食肉や乳製品への要求を背景に,家畜類への飼料用穀物の需要が増大しており,これをまかなうためにアメリカ,カナダ等を中心とした西側諸国から大量の穀物輸入を行って,国内生産の不足分を補っている。88/89年度(88年7月~8俳ト6月)のソ連の穀物輸入量は,3100万トンにのぼると見込まれており(前出アメリカ農務省資料),依然として高水準となっている。

畜産部門は,輸入穀物等により飼料供給が確保されたこともあって,88年1~9月期前年同期比てX食肉4%増,ミルク4%増,卵4%増とおおむね堅調な生産増加となっている。


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