昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第10章 中国:89年以降は経済過熱調整
85年の生産過熱はエネルギー・原材料・輸送力の面で隘路を生じたため,企業貸出金利の引き上げや,投資規模の縮小等の引き締め措置が採られ,鉱工業総生産(実質)は86年前年比11.7%増と85年の21.4%増からは鎮静化した。しかし,耐久消費財等に対する旺盛な需要に喚起されて,87年に入ると生産は再び拡大し同17.7%増となった。88年には,物価の先高感からー部で耐久消費財の買い急ぎが行われたこともあって,軽工業(消費財部門)を中心に急増し,88年の鉱工業生産は前年比17.7%増ど計画の8%を2倍も上回る伸びとなった。
しかし一方で,原材料部門,エネルギー部門の生産の伸びや輸送力などが鉱工業生産全体の伸びを大きく下回ったためにボトルネックが生じ,また国内でひっ迫した原材料などの輸入も増加傾向となった。こうした過熱傾向を引き締めるため,88年9,用こは中国人民銀行が貸出金利の引き上げを行ったが,物価の上昇率が金利水準を大きく上回っていることから,引き締めの効果はゆっくりとしたものとなろう。
また,現時点でもすでに需給ひっ迫等から価格が上昇している耐久消費財の生産を縮小すると,さらに物価上昇に拍車をかけることになるため,引き締めは緩やかに行わざるを得ないと考えられる。品目別の生産をみると(第10-3表),88年1~9月では,石油が前年同期比1.9%増,天然ガス同1.3%増,石炭同4.7%増,発電量同11.1%増と比較的低い伸びとなっている一方,冷蔵庫,カラーテレビ等は同87.7%,同51.1%と急増している。また,輸出の好調な繊維・同製品等は,綿花等原料の逼迫などもあって伸びがひとけた台に低下している他,需要が一巡した自転車,洗濯機等は減産となっている。