昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第10章 中国:89年以降は経済過熱調整

2. 農業生産

中国の穀物生産は,85,86年と4億トンを割りこんだ後,87年には4.03億トンとなったが,88年も,年央のかんばつや,播種面積の減少(88年前年比1.3%減)などもあって,3.94億トンと減産となった(第10-2表)。また88年には,綿花が前年比4.3%減,油料作物も同15.9%減となり,農業総生産額は,87年の同5.8%増から88年には同3%程度の増加に止まった。この要因としては,農業に対する投資シェアの低下(基本建設投資に占める農業への投資シェア,81~85年平均5.1%から87年3.1%)や,住宅用の土地の増加等に伴う耕作面積の減少が考えられる。また87~88年には農村部の余剰人員吸収等の観点から,郷鎮企業(農村部の工業企業)が奨励されたこと等もあって,農業従事者が減少傾向となっていることも影響しているとみられる。その他,農業用化学肥料やシート等の値上がりが,農産物買上価格の上昇分を大きく上回っているため,農家の生産意欲を減退させていること等もあげられる。

このように85年以降穀物生産は低迷しているが,このところ酒類の増産などもあって,穀物の需要は拡大しており,国内需要を充たせない状態となっている。87年には2年ぶりに穀物輸入超過となり,小麦中心に891万トン,88年1~6月期には324万トンの輸入を行った。こうした穀物の需給ひっ迫のなかで,穀物価格は国営商店で87年前年比6.0%上昇(自由市場では87年同18.1%上昇,88年8月前年同月比25.2%上昇)となった。

これは,飼料用穀物の値上がりを通じて畜産農家などにも打撃を与え,豚肉等の生産が減少傾向となったため,生産農家にインセンティブを与える意味から88年5月に豚肉の価格自由化が行われた。同時に,同じくひっ迫ぎみであった野菜,卵,砂糖の価格も自由化された。この結果,豚肉は全国平均で88年8月前年同月比54.6%,野菜同47.8%の上昇となっている。


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