昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第6章 イタリア:力強さ増す景気拡大

3. 生産・雇用

鉱工業生産(季調値)は,84年以降増加を続けており,87年前年比3.9%増(86年同2.8%増)となった後,88年に入ってからも,1~9月前年同期比5.0%増と,拡大を続ける景気を反映して高水準となっている。財別動向をみると,87年は,旺盛な個人消費から消費財が前年比3.8%増,中間財も同4.8%増と好調な伸びを示しており,資本財も年前半の伸び悩みがら同1.9%増にとどまったものの,年後半からは,活発な設備投資により急速に伸びを高めている。そして,88年に入ると,消費・投資両面の好調から,どの財も好調な伸びを示している。また,稼働率(原数値)も,こうした生産の増加基調をうけて上昇し,88年1~9月平均77.8%と,過去のピーク(73年10~12月期78.8%)近い水準に達している(第6-1図)。

次に雇用情勢をみると,87年は,労働力人口2,367万人(前年比1.2%増)に対して,就業者数2,084万人(同0.1%減),失業者数283万人(同8.5%増),失業率12.0%(同0.9%ポイント増)となり,前年に比べやや悪化した。このように景気の拡大にもかかわらず,雇用情勢が厳しい理由としては,労働市場へのベビーブーム世代や女子の新規参入による労働力人口の高い伸び,企業の合理化投資による人員削減の影響(大企業雇用指数は一貫して低下を続けており,88年4~6月期は71.0と,80年の水準に比べ約3割の減少となっている),第3次産業の雇用吸収力の不足等が挙げられる。なお,88年に入ると雇用情勢にいくぶん好転の兆しがみられ,88年7月現在では労働力人口2,432万人(前年同月比1.7%増)に対して,就業者数2,147万人(同2.0%増),失業者数285万人(同0.6%減),失業率11.7%(同0.3%ポイント減)となっている(第6-2表)。また,88年7月現在の失業率の内訳をみると,南部では20.6%(前年同月19.8%)とさらに悪化しているのに対し,中部は9.8%(同9.8%)と変わらず,工業地帯の北部では6.4%(同7.5%)とむしろ改善してきており,地域間格差がさらに拡大している。また若年失業者(14~29歳)は207万人(全失業者の72.4%)に達している。


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