昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第6章 イタリア:力強さ増す景気拡大

4. 賃金・物価

消費者物価(生計費)上昇率は,80年の前年比21.3%をピーフにして,低下を続けており,特に87年は原油価格の下落やドル安による輸入品価格の低下もあって,前年比4.6%ときわめて低い上昇率となった。また,88年に入っても1~11月6前年同期比4.9%と落ち着いた動きとなっている。

一方,賃金上昇率は,85年末に行われたスカラ・モビレ(賃金の物価スライド制)の改訂により,物価と賃金のスパイラルがほぼ断ち切られたことから,かっての2桁の上昇から86年以降は緩やかな上昇にとどまっており,86年(4.8%)には消費者物価上昇率(6.1%)を下回った。87年には,労働協約の改訂による基本給等の引き上げの影響もあって,再び消費者物価上昇率を上回る伸びに転じたものの,前年比6.5%にとどまっており,88年に入っても1~9月前年同期比6.4%の緩やがな上昇となっている(第6-2図)。

なお,スカラ・モビレの改訂によるこうした緩やがな賃金上昇や,労働組合の穏健化(労働争議による損失労働時間は,82年の1億2,994万時間がら87年には3,224万時間まで減少)は現在の景気拡大の一因にも挙げられている。


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