昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第5章 フランス:内需を中心に景気拡大続く

5. 貿易・国際収支

(貿易収支は悪化続く)

輸出(FOB,季調値)は,87年2.8%増(8,889億フラン)の後,88年に入り,年初に伸び悩みがみられたが,4月以降は回復を示し前期比で4%前後の伸びで推移した。部門別の動向をみると,4~6月期には乗用車を中心とした輸送機械部門で前期比15.3%と大幅な増加となった。7~9月期には,主に中間財(前期比7.6%増),資本財(同5.3%増)部門で高い伸びとなった。国別の動きをみると,全輸出の約6割を占めるEC域内向けを中心に,特に4~6月期には,イギリス,スペイン向けが増加,7~9月期には,西ドイツ,イタリア向けが増加した(第5-4図)。

輸入(FOB,季調期)の動きをみると,87年6.1%増(9,205億フラン)の後,88に入って,1~3月期前期比若干のマイナスとなったが,その後急速に回復がみられ,4~6月期前期比3.9%増,7~9月期同6.へ8%増となった。部門別では,好調な設備投資を背景に,資本財が年初より大幅な増加を示した他,7~9月期には,個人消費の回復等に伴い,中間財,消費財に回復がみられた。

国別では,4~6月期は,イギリス,スペイン等からの増加となった後,7~9月期には,西ドイツ,イギリス,イタリアからの増加がみられた。

貿易収支(通関ベース)の推移をみると,87年に,内需の拡大と輸出市場でのマーケットシェアの喪失等もあり,6,086億フランと大幅な赤字となった後,88年も赤字が続いており,1~9月までの累計で477億フランの赤字となった。

部門別では,乗用車を中心とする輸送機械部門では,黒字を続けているが,資本財部門が88年1~3月期に,黒字幅を大幅に縮小し,4~6月期には赤字に転じた他,7~9月期には,中間財,消費財部門で赤字幅が拡大した。国別でみると,イギリスに対しては黒字となっているが,西ドイツに対しては,大幅な赤字を記録しており,1~9月でみると,全体の赤字の約56%と大きな割合を占めている。また,88年に入り,アメリカに対する赤字が増加している。

政府は,こうした貿易悪化を重大にとらえ,企業の海外進出費用等の税額控除措置等の輸出努力を支援する対策を検討している。

(経常収支は赤字基調)

経常収支の動きをみると,87年に245億フランの赤字となった後,88年も,貿易外収支のなかの旅行収支が黒字となっている他,同投資収益収支が,直接投資収益の増加や,対外利払費の減少等により,1~3月期に黒字に転じたが,前述のように貿易収支の悪化が続いており,1~3月期38億フランの赤字,4~6月期11億フランの赤字と赤字基調となっている。長期資本収支は,フランス企業の活発な海外直接投資が行われている一方,ECの市場統合を睨んだ海外からの直接投資の増加や,国内への証券投資の増加もあり,赤字幅に縮小がみられる。


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