昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第5章 フランス:内需を中心に景気拡大続く
鉱工業生産は,緩やかな拡大となった87年(前年比2.1%増)の後,88年に入り,ほぼ横ばいの推移となったが,6月に,乗用車を中心に,前月比1.8%増と急速な上昇を示した。その後も,伸び率は低下したものの,拡大が続いている。しかし,10月には,ストの影響もあり,主に乗用車,エネルギー部門で減少がみられ,前月比3.2%減(前年同月比2.4%増)となった(第5-2図)。
部門別の生産動向をみると,88年1~3月期には,暖冬による需要減により低下したエネルギー部門を除いて,全体的に87年末の水準より上昇がみられた。
特に,乗用車市場の活発な動きや,住宅投資の増加等を背景として,乗用車等を中心とする耐久消費財部門での伸びが高くなった。4月以降は,中間財部門に回復がみられ,7月以降は,個人消費の回復等もあり,非耐久消費財部門でも回復した。一方,資本財部門では,4月以降低下傾向となっている。INS EEの生産動向に関するアンケート調査(10月実施)によれば,年末にかけて,輸出向受注が増加を続ける他,国内向け受注のより一層の伸びが見込まれており,生産は,資本財,中間財を中心に拡大が続くとしている。
雇用情勢をみると,経済の拡大が続く中,政府の雇用対策等も加わり,サービス部門を中心に雇用は増加している。しかし,労働市場への新規参入者が増加を続けているほか,政府の雇用対策等が終了すると再び失業者となってしまうという現象がみられ,失業率は高い水準が続いており,雇用情勢は依然として厳しい(第5-3図)。
求職者数の動きをみると,年前半は,ほぼ横ばいとなった後,7~9月期はやや増加がみられる。これは,職業訓練終了者が労働市場で再び失業者となったことが大きく影響している。未充足求人数をみると,経済が拡大を続けるなか年初より緩やかに増加している。
政府は,88年6月に期限が到来した職業訓練雇用に対して,企業の社会保障負担の免除措置の1年延長し雇用を促進することを決定している。また,9月予算案発表の中で,新設企業に対する法人税の軽減措置による中小企業の育成を行い雇用の増加を図ることや,企業内職業訓練に対する還付率を従来の25%から30%に引き上げること,若年雇用制度の見直し,増加傾向となっている長期失業者に対する新たな訓練制度の実施等の提案を行っている。
労働争議による労働損失日数は,87年は,前年よりやや減少して,501(千日)となった後,88年に入ってからは,1~6月で575(千日)と大幅に増加している。9月の末からは,公共部門を中心とした,大幅なストが発生し,約1か月以上に渡り継続しているたこともあり,労働損失日数は,88年全体では,かなりの増加となると思われる。