昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第5章 フランス:内需を中心に景気拡大続く

2. 需要動向

実質GDP(マルシャン・ベース)は,87年2.4%増の後,88年に入って,外需の引き続く悪化はあるものの,企業設備投資と住宅投資等を中心に,1~3月期前期比1.2%増となった後,4~6月期同0.4%増,7~9月期同0.8%増と,拡大が続いている。こうした状況下,88年の成長率は,投資,個人消費を中心に,3.5%(INSEEの12月見通し)と最近のフランス経済としては高い伸びが見込まれている(87年は2.3%)が,9月下旬より発生し,大規模化したストの影響も懸念される。

(力強さに欠ける個人消費)

個人消費は,87年後半より回復し成長率の引き上げに貢献した。しかし,88年には,引き続く政府の所得税減税等の政策にもかかわらず,年初来伸び悩んだ。その後,年後半は回復がみられた。GDPベースでみると,1~3月期は,乗用車等の耐久財は堅調に推移したものの,非耐久財が伸び悩んだ他,暖冬によるエネルギー需要減等もあり前期比0.3%増となった。その後,4~6月期には,乗用車が伸び悩んだ他,家電製品等の売れ行きも鈍化し,前期比横ばいとなった。7月以降は,衣料品等の非耐久財を中心に回復がみられる中,乗用車も好調となり,7~9月期前期比1.8%増と回復がみられた(第5-1表)。工業品消費の動きをみると,年初来伸び悩んでいたが,7~9月期には,前期比4.4%増と回復した。10月は,9月末からの交通スト等の影響もあり,前月比2.9%の減少となったが,11月には同2.0%増とやや回復した。乗用車登録台数は,4~6月期に,前年同期比3.0%増と,やや伸びを弱めたものの,年初来好調な推移となっている。

実質可処分所得の動きをみると,引き続く政府の賃金抑制政策等もあり87年前年比1.1%増となった後,88年も1~3月期前期比0.3%増,4~6月期0.5%増と低い伸びとなっている。こうした実質可処分所得の低い伸びは,消費に対してマイナス要因となったと考えられる。貯蓄率は,消費が伸び悩んでいるなか,1~3月期12.0%,4~6月期12.6%とやや上昇している。個人信用残高は,87年前年比14%増となった後,88年も増加が続いており,前年比約22%の増加となるとみられている。

(好調に推移した設備投資)

88年は,ヨーロッパ,アメリカで投資がブームとなり,フランスにおいても活発な動きとなった。総固定資本形成は,1~3月期前期比2.4%増と大幅に増加した後,4~6月期同1.0%増,7~9月期同1.0%増と堅調に推移している(第5-2表)。

実質企業設備投資は,経済の拡大が続く中,企業収益の回復,自己資金の充実等もあり,年初より好調に推移している。1~3月期は,前期比3.2%増と大幅増となった後,4~6月期はやや伸びを弱めたものの,堅調に推移している(4~6月期前期比0.4%増,7~9月期同0.7%増)。INSEEの設備投資アンケート調査(87年6月実施)によれば,88年の企業設備投資は,乗用車を中心とする輸送機器部門(名目で22%の伸びが見込まれている),エレクトロニクス関連の資本財部門等を中心に,実質で9~10%の増加となるとしている(87年は4.2%増)。企業規模別にみると,87年に引き続き,中小企業の伸びが高くなっている。企業の設備投資が活発となっている背景には,企業収益の回復や,稼働率が高水準となっていること,そして,1992年末のECの市場統合に向けての競争力強化のための準備によるもの等があると考えられる。ECの年次経済報告(1988~89年)によれば,フランスでは従来,比較的労働節約的な投資が多かったが,最近は,賃金上昇の伸びの低下等もあり,供給力拡大のための投資もかなり行われているとしている。政府は9月の予算案発表のなかで,来年度は,生産投資を促進するため,企業の留保利益にたいする法人税率を現行より3%引き下げ39%とするとしている。

実質住宅投資は,85,86年前年比マイナスの伸びとなった後,87年も0.9%の増加と僅かな伸びに止まったが,88年に入り,1~3月期前期比0.8%増,4~6月期同2.2%増,7~9月期同1.5%増と好調な推移を示している。

在庫投資の動きをみると,年初よりの個人消費の伸び悩み等もあり,年前半大幅増となったが,7月以降は個人消費が回復を示し,設備投資も依然好調な推移となり,輸送機器,消費財部門等を中心に在庫調整が進みつつある。


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