昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第5章 フランス:内需を中心に景気拡大続く

1. 概  観

88年のフランス経済は,87年10月の株価下落による世界経済の成長鈍化予想等により若干の景気後退が見込まれていたが,その影響は軽微に止まり,年前半は,投資を中心として緩やかな拡大となった後,後半に入ってからも,引き続き投資が好調な推移となる中,個人消費に回復がみられ,経済は拡大が続いている。この間の外需の動きをみると,年初,暖冬等によるエネルギー需要減等もあり,ほぼゼロの寄与度となった後,4月以降は,乗用車等を中心に輸出の増加はあったものの,設備投資の好調に伴う資本財の輸入が大幅に増加し,マイナスの寄与度となった(第5-1図)。なお,9月下旬より発生し,大規模化した公共ストの経済への影響が懸念されている。

消費者物価は,サービス部門を中心に,年初より緩やがな高まりを示しているが,総じてみれば概ね落ち着いた動きとなっている。雇用情勢は,経済の拡大が続くなか,主としてサービス業での雇用の増加がみられ,失業率はやや低下しているが,その水準は依然して高く厳しい状況にある。こうしたこともあり,政府は引き続き雇用対策を実施している。貿易収支は,設備投資の好調な伸びを背景に,資本財,中間財輸入が増加しており,87年に引き続き大幅な赤字が続いている。

経済政策面では,5月に誕生した新社会党内閣は,①インフレ対策の徹底,②フランス・フランの通貨価値強化,③財政赤字の削減を実行されるべき項目として掲げ,安定した持続的経済成長と雇用創出を達成することを目標とするとしている。これは,前保守党政権と基本的姿勢は変わらないものとなっている。なお,9月末,第10次経済計画の大綱が発表された。


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