昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第4章 西ドイツ:輸出,設備投資が増加
商品輸出額は,87年は前年比0.2%増のほぼ横ばいと不振であったが,マルク相場安定や世界的な設備投資の増加にともなって88年春以降持ち直し(第4-8図),88年1~10月が前年同期比6.5%増と好調である。地域別ではEC諸国向けが大幅増(1~8月の前年同期比9.6%増)となっているほか,OPEC諸国向け(同7.3%増),共産圏諸国向け(同5.5%増)も,増加に転じた。し7かし,アメリカ向けは減少した(同13.5%減)。財別では,資本財が急増している。商品輸入額も87年は前年比1.0%減であったが,88年1~10月は前年同期比6.1%増となった。アメリカからの輸入が急増(1~8月の前年同期比11.2%増)したほか,アジアNIEsからの輸入も上半期に同11.3%の急増を示した。
貿易収支黒字は87年に1,177億マルクとなって史上最高を更新したが,88年1~10月間には更に,1,014億マルクと前年同期の938億マルクより拡大しており,88年合計では史上最高を更新する見込みである。経常収支黒字は87年に808億マルクと前年の史上最高の黒字(845億マルク)よりは縮小したが,88年1~10月間は643億マルクと前年同期(621億マルク)を上回った。
また,87年後半以降西ドイツからの長期資本の流出が続いており,長期資本収支の赤字額は,87年下半期が422億マルク,88年上半期は506億マルクとなった。これは,対米金利格差が拡大したこと,89年初から債券等の利子に10%の源泉徴収税が課されることが決定されたことにより,西ドイツ国内債の魅力が小さくなったことが原因となった。しかし,88年7月以降は,公定歩合の引き上げやマルク相場の持ち直しなどから赤字幅は縮小し,7~9月期は165億マルクとなった。