昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第4章 西ドイツ:輸出,設備投資が増加
高水準の失業が続く中で,労働組合は,賃上げより労働時間の短縮による雇用拡大を目指す路線をとっており,長期間の労働協約を締結して段階的に労働時間の削減を図っている。西ドイツ最大の労組,金属労組の協約は,①87年4月~88年3月,3.7%の賃上げ ②88年4月~89年3月,2%の賃上げと週38.5時間→37.5時間 ③89年4月~90年3月,2.5%の賃上げと週37.5時間→37時間,となっている。また,二番目に大きい公務・運輸・交通労組の協約は,賃上げについては88年2%,89年1.4%,90年1.7%,労働時間については,①89年4月~90年3月,週40時間→39時間 ②90年4月~91年末,週39時間→38.5時間,となっている。
全産業時間当たり賃金率の動きをみると,87年が前年比3.8%,88年4月以降7月まで前年同月比3.5%となっている。
物価動向をみると,86年中石油価格の下落の影響をうけて大幅に下落したあと,87年,88年は同要因の剥落とともに緩やかに上昇した。しかし,国際的にみると,物価上昇率の低い国となっている。
輸入物価についてみると,87年に入って原油価格が回復し,また,マルク相場も安定する中で,年央にかけてやや上昇した(第4-7図)。夏以降はマルク相場の上昇にともなって再び下落し,87年平均では前年比6.5%の下落(86年は同18.9%の下落)となった。88年に入ってからはマルク相場下落とともに上昇している(11月は前年同月比2.1%の上昇)。
工業品生産者価格は,87年5月以降前年同月比で上昇に転じ,年平均では,前年比2.5%の下落(86年は同2.5%の下落)となった。88年は,基礎財の上昇を中心に,緩やかに上昇した(11月の前年同月比1.7%上昇)。
消費者物価も87年4月以降前年同月比上昇に転じたものの,87年平均では前年比0.2%の上昇となった(86年は同0.2%の下落)。88年に入ると,輸入物価の上昇につれて緩やかに上昇した(11月の前年同月比1.6%の上昇)。また,年央以降は家賃の上昇率がたかまっている。