昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第4章 西ドイツ:輸出,設備投資が増加
実質GNPは,83年初来増加傾向にあるが,83年から87年までの平均成長率が2.2%と極めて低い伸びにとどまっている。特に87年は外需がマイナスの寄与を続ける中で内需の伸びが鈍化したことから,成長率は年初の政府見通し2.5%を下回る1.8%にとどまった(87年のOECD諸国平均成長率3.1%)。
しかし,88年に入ると,輸出の増加,設備投資の回復から実質GNPの増加テンポは高まった(第4-3図)。四半期別にみると,1~3月期は暖冬による建設工事の進捗などから前期比1.4%の大幅増となり(第4-1表),4~6月期はその反動もあって同0.2%減となったものの,7~9月期には,内外需ともにプラスの寄与どなって再び同1.3%増となった。88年の成長率は約3.5%と,なるとの見通しが多いが,連銀によると,うち暖冬要因は約0.5%としている。
実質個人消費は,86年初の所得税減税(109億マルク,GNPの0.6%)や石油価格下落による実質的な所得増効果などから86年3.4%増,87年3.5%増と,それ以前に比べ高い伸びとなった。
しかし,88年は年初の所得税減税(137億マルク,GNPの約0.7%)にもかかわらず,実質個人消費は1~3月期の前期比0.6%増の後,4~6月期は同0.5%減となり,7~9月期には同0.9%増となったものの,1~9月の前年同期比では2.7%増と,86年,87年に比べ伸びが鈍化している。
所得面からこの原因についてみると(第4-2表),88年上半期の純賃金・俸給は,減税の効果から前年同期比4.1%の大幅増となった。しかし,利子・配当等の財産所得が同2.4%増にとどまり,可処分所得は同3.8%増,実質可処分所得では同2.6%増と86年,87年を下回る低い伸びにとどまった。
消費支出面からみると,乗用車は,排ガス対策車購入促進のための自動車税減税との関連で,86年,87年と登録台数が増加したものの,88年は1~10月は前年同期比3%減と不振だった。
実質機械設備投資は,86年前年比4.1%増,88年同4.0%増と着実な増加を続けた。しかし,87年10~12月期は株価下落やマルク相場の一段高による先行き不透明感,アメリカ向け輸出の先行き懸念等もあって,前期比1.1%減となった。
88年に入ると,①輸出好調にともなう企業マインドの好転(第4-4図),②企業収益の改善(88年上半期の企業・財産所得は前年同期比10.3%増),③稼働率の上昇(第4-5図,88年7~9月期は87.5%),④金利低下による金融資産から実物資産へのシフト,等から企業投資を中心に回復しており,上半期は前年同期比4.6%増(連銀推計)となった。
IFO経済研究所の投資予測調査(88年8~9月実施)によると,製造業の粗固定投資計画は,88年が実質で前年比4.5%増(前回88年3~4月調査では3%増),89年は同7~8%増となっており,企業の投資意慾は非常に根強い。
また,87年12月に採られた景気対策(付注4-1参照)により,連邦郵便(Deutsche Bundespost)の設備投資額を87年の183億マルクから,88年は200億マルクに増加させたことも設備投資の増加に好影響を与えた。
実質建設投資は80年代初来長期的な減少傾向にあり,87年は実質で前年比0.2%増にとどまった。しかし,88年上半期は,暖冬の影響から前年同期比10.4%の大幅増となっている。内訳をみると,建設投資の約半分を占める民間住宅投資が,同10.2%増と持ち直したことに加え,財政再建から減少傾向にあった公共投資も,88年上半期は,税収の伸びが好調だったことや,87年末に景気対策として採られた低利融資の効果から同12.6%の大幅増となったことが影響してた。
在庫投資は,87年春から夏にかけて投資額が減少したが,年末には大幅積み増しとなった。これは,マルク相場の上昇や,一次産品価格の上昇を背景に,原材料を中心に在庫が積み増されたためとみられる。88年に入ってからも,景気拡大テンポの高まりから,製造業の完成品在庫は縮小傾向にあり,このため積極的な在庫積み増しが行われたものとみられる。