昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第1章 アメリカ:6年を超える長期拡大

4. 物価・賃金

(1)緩やかな上昇が続く物価動向

原油価格動向の影響一巡や株価大幅下落などもあって,87年後半から88年1~3月期にかけて物価上昇率はやや鈍化していた。その後,物価はなおおおむね安定圏内にあるものの,予想以上に堅調な国内景気動向や干ばつ等を背景に再び緩やかな高まりをみせた。消費者物価(総合指数・前年同月比)でみると,88年中はおおむね4%前後で安定した推移となっているが,これは干ばつ等による食料品価格の上昇及びその他商品・サービス価格の上昇をエネルギー価格の低下が相殺したためである。エネルギーを除くベースでは87年の4.1%に対し,88年11月現在4.6%となっている。ドル安や輸入数量規制の影響で衣料品が上昇したほか,医療費等のサービス価格の上昇などが目立った。この傾向は卸売物価(完成財・前年同月比)により端的に現れており,総合では88年11月現在3.2%の上昇に対し,エネルギーを除くベースでは4.1%となっている。88年前半に中間財価格の上昇がやや加速しており,タイムラグを伴って完成財にもさらに影響するものとみられる。アメリカ経済が完全雇用状態に近いといわれるほど堅調に拡大していることが,こうした物価動向の基本的な背景となっているが,今後は引き締め気味の金融政策の下で景気拡大テンポの鈍化が予想され,物価は引き続き緩やかな上昇にとどまるものとみられる。

(2)やや高まりを示す賃金上昇率

賃金上昇率(時間当たり・民間非農業)は,87年に引き続き大幅に改善した雇用情勢を背景に88年中はやや高まりを示し,10月には4.1%(前年同月比)と消費者物価の同4.2%にほぽ並ぶ水準となった後,12月には同3.5%となっている。業種別では,87年前半に3%台だったサービス業の賃金上昇率(時間当たり・前年同月比)が最近では5%前後に高まったほか,87年中おおむね1%台の低水準にとどまっていた製造業でも,最近では同3%弱に達している。その結果,非農業部門の単位労働コストは88年後半にかけて着実に上昇率の高まりがみられた(第1-11図)。ただ,製造業部門では生産性上昇率も比較的高いことから,単位労働コストの上昇率はなお小幅なものにとどまっている(「昭和63年度年次世界経済報告」,第1-2-3図参照)。組合組織率の低下に歯止めがかからないことや海外との競争激化などもあって,主要労働協約(民間企業)における賃上げ率は88年1~9月平均で初年度2.5%となお低水準にあり,現在程度の賃金上昇率の高まりであれば物価への影響を懸念するほどまでには至らないとみられる。


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