昭和63年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1987~88年の主要国経済

第1章 アメリカ:6年を超える長期拡大

3. 生産・雇用

(1)伸びを高めた鉱工業生産

鉱工業生産は87年後半以降資本財,非耐久財を中心に増勢を強めていたが,同年10月の株価大幅下落の影響が不透明だったことや原油価格が再び軟化したこと等から,88年1~3月期には乗用車や石油生産を中心にやや増勢が鈍化した。しかし,その後は乗用車,家財(家具,電器製品等)等の耐久消費財も持ち直したことから再び伸びを高め,88年中はおおむね前年比ベースで6%前後と83,84年以来の高い伸びを続けた(第1-9図)。

こうした好調な生産動向の背景としては,①ドル安による輸出競争力の回復に加え,日本,EC,アジアNIEs等で設備投資を中心に内需の伸びカア比較的高かったことから非耐久財,資本財等の輸出が引き続き好調を持続したこと,②株価大幅下落にもかかわらず個人消費は底固く推移した一方,高水準の稼働率,受注残を背景に機械設備への投資が大幅に伸びたこと,③原油を除く一次産品価格が引き続き堅調に推移し,鉱業生産も1~3月期を除いておおむね増勢を維持したこと,等があげられる。今後は,需要面からは若干の拡大テンポの鈍化が予想される一方,供給面からも雇用,稼働率等の面でやや生産能力の上限に近づきつつあることもあって,これまでのような増勢を維持することは困難となっている。しかしながら,生産増の中心を占める耐久財についてはなおかなりの生産余力があること,87年以降の設備投資増が徐々に能力増強につながっていることなどから,鉱工業生産は引き続き続き緩やかな伸びを続けるとみられる。

(2)さらに改善した雇用

雇用情勢をみると,失業率(軍人を含む)は88年に入ってからも引き続き低下し,6月には5.2%まで低下するなどさらに改善した。その後,失業率はおおむね横ばいとなり,12月現在5.3%となっている。このように失業率が70年代前半以来の低水準となったのは,輸出増,設備投資増に支えられた景気拡大が予想以上に堅調で,サービス業で雇用が大幅に増加したほか,製造業でも引き続き増加したことが主因である。88年中の非農業部門の雇用者増加数は366万人(うちサービス業296万人,製造業40万人,その他29万人)と,好調だった87年(同343万人)を上回るものとなっている(第1-10図)。

業種別にやや詳しくみると,製造業のなかで雇用の伸びが高いのは好調な輸出,設備投資に支えられた一般機械,一次金属,次いで化学,紙・パ等の非耐久財産業となっており,電気機械は微増,自動車は微減となっている。サービス業では卸・小売の伸びが高いが,株価低迷等から金融・保険では伸び悩んでいる。建設業は構築物投資の回復等からやや持ち直しつつある。鉱業,石油・ガスではそれぞれ価格動向等を反映して,88年後半には前月比マイナスとなっている。今後は,景気拡大テンポの鈍化が予想され,雇用者薮は引き続き緩やかな増加が見込まれるものの,失業率はおおむね横ばいの推移となろう。


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