昭和55年
年次世界経済報告
石油危機への対応と1980年代の課題
昭和55年12月9日
経済企画庁
むすび
こうした中でわが国に要請される役割・責任には極めて大きいものがある。
混乱の70年代を通じて,わが国経済は,60年代と比べると鈍化したものの世界的にはなお高い成長を維持し,世界経済に占める比重を高めて来た。四半世紀前には世界のGNPのわずか2%にすぎなかった小国日本は今や世界のGNPの1割を占め,アメリカに次ぐ経済大国に成長した。1人当たりGNPの水準もアメリカのそれの約8割に達し,サミット参加7か国の中でも中位に位している。
経済規模とともに重要なのは,わが国経済のパフォーマンスの優秀さである。米・英をはじめ多くの主要国が生産性の鈍化,インフレの悪化に悩む中で,わが国はいぜん高い生産性と安定した物価,国際競争力,成長力を維持している。今やわが国は,分野によってはかって先人であった欧米諸国から,生産性維持の秘密を学ばれるまでになっている。
こうして名実ともに世界の経済大国となったわが国は,欧米諸国と協力しつつ,自由貿易体制の堅持,発展途上国援助の拡充,国際通貨の安定等経済政策面での国際協調の推進等その経済力にふさわしい責任と指導力をもって,世界経済全体の運営に一層積極的に参加していかなければならない。