昭和54年
年次世界経済報告
エネルギー制約とスタグフレーションに挑む世界経済
経済企画庁
第3章 スタグフレーションと世界経済
第4節 先進国の労働力供給構造の変化と完全雇用失業率の高まり
OECD主要国の失業率の推移を長期的にみると,1960年代後半以降ほとんどの国で失業率はすう勢的に上昇しており,最近にいたる程それが底上げされている。この傾向はすでに73年の第一次石油危機以前から現われていたが,それが石油危機以降一段と顕著となった。いま,景気のピーク時点における失業率の推移を主要国について見ると,まず,アメリカでは69年3.5%,73年4.9%,78年6.0%となっている。イギリス,西ドイツでは60年代の低い失業率は70年代に入って急速に高まり,イギリスは73年の2.3%から78年には5.7%へ,西ドイツは同じ期間に1.1%から4.4%となっている。日本では60年代を通じて低い失業率が維持されたが,73年の1.3%から78年には2.2%へと上昇を示している(第3-4-1表)。ピーク時点での失業率の高まりは,次の景気下降局面がより高い失業率から出発することを意味し,それだけ失業問題を深刻化させているのである。
こうした主要国における失業率の高まりは労働力需要,労働力供給の両方の要因からもたらされている。いま1960年代央以降を仮に第一期(63~67年),第二期(68~73年),第三期(74~78年)の三つの時期に分けると,主要国の労働需給の特徴は総じて見れば第一期は労働需要の伸びが大きく供給の伸びが相対的に小さかったため完全雇用が達成しやすかった時期,第二期は労働需要の伸びはひきつづき大きかったが供給の伸びも大きくなり,完全雇用達成がそれだけむずかしくなった時期,そして第三期は労働供給の伸びが依然高水準をつづけたのに対し労働需要が伸び悩んで失業率が高まった時期と性格づけることができよう。こうした視点でみると,現在の失業の急増は,インフレ・エネルギー制約等で労働需要の大幅な伸びが期待できないときに,労働の供給圧力が強いところに問題がある。インフレについては本章前節で,またエネルギーについては前章で検討したのでここでは主として労働力供給面から失業率の高まりの原因を分析してみよう。
70年代の労働力供給構造は,国及び地域によって相違があるのはいうまでもないが,大観して,①労働力の伸びの高まり,②女子労働力の伸びの高まり,③若年失業問題の深刻化の三つの特徴が指摘できよう。
こうした供給側の特徴が需要面とも合わさって最近の失業の態様を顕著に変えている。
(1)労働力人口の伸びの高まりと北米・西欧の相違
0ECD諸国全体の労働人口は最近の10年間(65~75年)に年率1.2%というかなり高いテンポで増加した(57~65年0.8%)。
主要国について,63~67年,68~73年,74~78年における労働力人口の推移をみると(第3-4-2表),アメリカでは60年代前半から伸びが高まり68~73年2.3%,74~78年2.5%とさらに伸びを高めている。一方,西欧諸国をみると,西ドイツでは60年代に入って伸びが著しく低下ないし停滞したあと第一次石油危機後も減少に転じている。イギリスでも伸びが極めて緩やかであるが,63~67年の停滞(0.1%増)から徐々に高まりをみせ,74年以降は0.6%となっている。フランスでは60年代に伸びを高めたあと引続き1%前後を維持しており,西欧諸国の中では例外的に高い伸びを示している。また,日本では50年代後半の1.6%をピークとして伸びは鈍化し,74年以降は0.8%となっている。
こうした労働力人口の伸びにみられる国別格差は生産年齢人口の伸びと労働力比率の相違によってもたらされる。まず生産年齢人口の伸びはおおむね15年前の自然増加率(=出生率-死亡率)できまる(第3-4-3表)。アメリカ,カナダ,日本では出生率が高く,死亡率が低く従って自然増加率が高いのに対して,西欧諸国では出生率が低く,死亡率が高いため自然増加率が低いという特徴がみられる。また,アメリカ,カナダの出生率は,40年代後半から60年代はじめにかけて増加テンポがかなり高まっている。これがいわゆるベビー・ブームといわれる現象である。これに対して西欧諸国ではこの期間にもとくに伸びの高まりは認められない。
次に米,英,独,日について景気のピーク時点での労働力化率の推移をみると( 第3-4-1表 ),①アメリカでは一貫して上昇している。②これに対して,イギリス,西ドイツ,日本では低下傾向にある,③とくに日本の低下が著しい,④イギリスでは最近になってやや高まっていることが見てとれる。
このようにみてくると,アメリカで労働力人口の伸びが著しく高いのは生産年齢人口の伸びが高いうえ,労働力化率が一貫して上昇しているからであり,日本が西欧諸国に比べて労働力人口の伸びが相対的に高いのは労働力化率の低下を生産年齢人口の伸びでカバーしているためである。西ドイツ,イギリスでは生産年齢人口の伸びが緩かでしかも労働力化率も低下しているため労働力人口の伸びが鈍いのである。このほか70年代初頭のアメリカの労働力人口の伸びの高まりにはベトナム停戦による復員軍人が,また石油危機以降の西ドイツの労働力の減少には外人労働者の帰国が影響している面もある。
つぎに需要面の影響を見るため主要国の労働人口,就業者数,失業者数の関係をみると第3-4-2表のようになる。これによると労働力供給圧力が失業の増大要因となった時期は,労働力の伸びの著しく高いアメリカを除けば第一次石油危機以降である。しかもアメリカでは就業者数もかなり増加しているなかで失業が急増しており,労働供給圧力の強さを示している。イギリスでは労働力急増の大部分が失業増となっている。これに対して日本,西ドイツでは労働力供給がかなり弱まっているにもかかわらず,就業者数の伸び悩みないし減少によって失業が急増しており,失業急増の要因が需要面にもあることを示している。
(2)女子労働力の高い伸び
近年における労働力供給構造の目立った特徴は女子労働力の急増である(第3-4-4表)。すなわち,主要7か国計(米,日,独,英,仏,伊,加)でみると,労働力全体に占める女子労働力の割合は55年の34.0%から65年36.8%,さらに75年には38.9%と顕著な高まりを示している。これを増加寄与率で見ると65~75年については53%に達し,石油危機以降の73~75年には実に81.0%に上っている。
このように,女子の労働市場への参入が増加している理由はいくつか考えられる。まず供給側の要因としては女子の社会参加意識が高まる一方託児所等の普及や家庭電化などによる自由時間の増大によって女子の社会参加が容易になったこと,第一次石油危機以降はインフレと不況に対処するため,家計補助の必要が増大したことなどが指摘されている。また,失業保険の充実・普及に伴い,職を失った女子が非労働力化せずに失業者として労働市場に滞留する傾向があるともいわれる。従来不況期には雇用機会が減少するのに伴い副次的労働力という立場にあった女子労働力は非労働力化する傾向があったが,石油危機以降はこうした傾向が弱まって,景気に関係なく増加傾向を示している。
より重要なのは需要側の要因である。それは労働需要の三次産業化現象である。すなわち近年の産業別就業者数の推移を見ると,ほとんどの国で一次・二次の就業者が相対的に減少しているのに対して三次産業の就業者が増加しているのが見られる。典型的なアメリカの場合を見ると就業者の増加(年率)は,70~75年には産業全体で7.8%増加したのに対し,一次0.1%減,二次1.1%減,三次9.0%増となっている。ところが,三次産業の教育,流通,サービス業などの申には女子に適した職種が多く,また,高度の技術を要せずパート・タイムでもよい職種が多い。そのため三次産業の労働需要は女子で充足されやすい。
その際三次産業への女子就業者は既存の失業者グループからよりも非労働力からの新規参入者によって占められる場合が多いため女子の労働力化率が上昇するわけである。このことは三次産業で相当の雇用機会の創出があっても失業者はあまり減少しない原因ともなっている。また,三次産業は二次産業に比べ転職率が高いので,全体として摩擦的失業を増大させ,いわゆる完全雇用失業率を高める一つの要因ともなっている。
一方,二次産業の労働需要の停滞は景気後退期に解雇された男子失業者の再就職を困難にし,男子失業の累積あるいは非労働力化をもたらしたとみられる。女子の失業急増が労働力化率上昇のなかで進行しているのに対して男子の失業増加は労働力化率低下のなかで起っているが,これは男子の失業増加は主として男子に対する労働需要の停滞が原因となっているのに対して,女子失業者の急増は急速な労働市場への参加という供給面に主因があるからである。
第3-4-5表 労働力人口,就業者数,失業者数に占める若年の割合
(3)若年労働力の伸びの国別格差と失業増加
失業の問題のなかで近年とくに重要かつ深刻なのは女子と並んで若年失業の増大である。若年失業は仕事を通じての訓練の機会を失なわせることになり,社会全体としての生産性向上の可能性を無駄にするほか,若年失業者の増大が社会不安の一因となるなど,社会的にいろいろな問題を生む元となっている。OECDによれば,主要7か国計の若年失業者(15~24歳)の全体に占める割合は76年には41.8%,失業者数は572万人に達し,失業率は成人の約3倍となっている。
若年労働力は60~76年の16年間で主要7か国全体で14.2の増加(650万人)となっている。もっともこれを国別にみると,増加しているのはアメリカ(84.4%),カナダ(95.1%),フランス(29.5%)だけであり,他の西欧諸国イタリア(32.4%減),西ドイツ(31.0%減),イギリス(9.6%減),日本(27.2%減)ではいずれも減少している。
こうした若年労働力の伸びにみられる北米での著増と仏を除く西欧・日本での減少という顕著な格差は,まず第一に前述のようにすう勢的な自然増加率の相違と戦後のベビー・ブームの影響の強弱が大きな要因となっていることはいうまでもない。
若年労働力の伸びを決定するもう一つの要因は,若年労働力化率の相違である。第3-4-6表は若年層を15~19歳,20~24歳に分けて,男女別に60年と75年の若年労働力化率を主要因について比較したものである。これによると,労働力化率が上昇しているのは,15~19歳ではアメリカとカナダの男子と女子,20~24歳では,カナダ,イギリス,フランスの女子であり,あとはいずれも低下を示している。
このことからアメリカ,カナダ,フランスでは戦後世代の生産年齢人口化の激しさと労働力化率,とくに女子の高まりによって若年労働力の増加がもたらされたこと,その他のほとんどの国ではベビー・ブームの影響の弱さと労働力化率の低下がその減少の原因となったことがわかる。
このようにみてくると,アメリカ,カナダ,フランスの若年失業急増は供給面からの圧力が大きな原因であるが,その他の国の若年失業問題は,景気回復テンポが緩慢だったため労働需要そのものが弱かった面が大きいものと考えられる。
若年失業者の急増には,マクロの労働需給の関係のほかに,後に述べる制度的要因が若年層にとくにきびしく作用している面もあると見られる。
なお,アメリカの若年労働力問題には人種問題がからんでいる。そもそもアメリカの白人非白人間の雇用の格差は若年層に限った問題ではないが,それが若年層にはとくに著しく現われているのである。すなわち,まず全体でみると,非白人の労働力に占める割合は75年で,11.4%,78年で11.9%であるのに対して,失業に占める割合は75年18.6%,78年23.6%とその2倍前後となっている。失業率で見ても,75年では白人の失業率7.8%に対して非白人13.9%,78年では前者の5.2%に対して後者は11.9%と2倍近い格差がある。とくに若年層の非白人,白人失業率格差(78年)は男子では2.5倍(34.4%対13.5%),女子では2.7倍(38.4%対14.4%)となっている。非白人・若年・女子の失業率は4割近くに上っているが,これは,非白人であること,若年であること,女子であることという三つのハンディキャップが重なった結果がどんなに厳しいものかを端的に示す数字である。
これは,非白人労働者には貧困家庭が多いこともあって教育水準が低く,技能・労働意欲に欠ける者が多く,しかも大都市に集中する傾向があるためである。こうして失業が貧困を生み,また貧困が次の世代の失業の原因となるという悪循環を生みだしており,アメリカの失業問題が質の異なる二重構造からなっていることがわかる。
近年先進諸国で完全雇用失業率が高まっている。完全雇用失業率とは現存する制度・構造の下でインフレを加速することなく達成できる最低の失業率である。スタグフレーションの悪化とは雇用面から見れば完全雇用失業率の高まりにほかならない。
さて完全雇用失業率の高まりの原因は大きく三つに分けられよう。その第一は前節で検討した労働力供給構造の変化である。第二には制度的要因にもとずく労働コストの押し上げである。第三は資本設備の相対的な不足である。その他技能,地域等に基づく労働需給のミスマッチもいわゆる摩擦的失業を高めて完全雇用失業率を引き上げる作用をもっていよう。
(1)労働力供給構造の変化
労働力供給構造の変化が完全雇用失業率を押し上げているのは北米地域で典型的に見られる。すなわち北米地域では,女子対男子及び若年対成年の失業率格差が大きい上,女子,若年の労働力人口に占める比重が増大している(第3-4-7表,第3-4-8表)。たとえばアメリカの場合には,60年代以降総需要管理政策の目標としての完全雇用失業率は4%とされていた。これは経済がほぼ完全雇用水準にあったと見られる1955年の失業率の水準から決定されたものである。しかし,CEAの計算によると以上のような労働力供給構造の変化によって当時の4%水準は78年には5.1%に高まっているという(50年代半ばの性別・年齢別失業率を78年の性別・年齢別ウエイトで加重平均し直したもの)。その上さらに制度面での変化による押し上げ分があるので本当の完全雇用失業率は6%近い水準になっていると一般に見られている。
これに対して独,伊等ヨーロッパでは若年労働力の比重は減少しているが,若年労働力と成年労働力の失業率の格差はここでも最近急速に拡大しており,その結果完全雇用失業率を高める方向に作用しているものと思われる。
最近ではどの主要国でも若年労働力の失業率は成年のそれを大幅に上回っているが,これは,若年労働者については,学生アルバイトなど学校と職場との間の出入り,生涯の職業を見出すための探索期間,技能不足などもともと失業率を高める要因があるほか,欧米諸国においては最低賃金,レイ・オフ制度等が若年労働者雇用に不利に働いているとも指摘されている。
また女子の失業率も,英,日等一部を除いて男子失業率を上回る傾向があるが,これは家庭と職場との出入・パートの比率の高さに加え産業内・企業間流動性の高い三次産業への就業機会が多いためである。
(2)制度的要因
先進国では労働コストの増大傾向が見られ,しかもそれが固定費用化する傾向を強めている。労働コストの増大とその固定費用化は,企業を雇用拡大について著しく慎重にさせ,解雇分の不補充,新規採用の慎重化,パート等有期労働者への転換,男子高賃金労働者から女子低賃金労働者への転換等の政策を採らせて,雇用機会の拡大を阻害する結果となっている。またこうした労働コストの上昇は資本との相対コストを高めて生産プロセスを資本集約的なものにシフトさせることによっても雇用拡大にマイナスに働く。インフレを悪化させる要因となって,需要管理政策の有効性を削減して,その面からも失業を増大させる一因となるのはいうまでもない。
労働コストの増大とその固定費用化には,付加給付,社会保障,最低賃金制,雇用制限的措置等の拡大普及も関連がある。
たとえば雇用制限的措置については,アメリカのレイ・オフ制度と西欧の解雇制限を見てみよう。
アメリカでは,製造業を中心としてレイ・オフ制度がかなり普及している。この制度は労働者を解雇するときの選定基準として勤続年数をもとにした先任権をとるものである。すなわち,解雇は先任権の低いものから,また再雇用は先任権の高いものから行われる。そのため,若年労働者は解雇されやすく,雇用されにくくなり,若年失業者の増大を加速させることとなっている。
一方,西欧では,解雇制限に関する法規・協約が中高年雇用者保護の立場からかなり普及しており,これ又若年層の雇用機会を狭めている。その骨子は,①解雇や配置転換には一定の予告期間を設ける,②解雇は極力避け,配転を優先させる,③配転による賃金低下を一定期間旧賃金を保障することによって緩和する,④配転されるものは,前職と類似の職への優先権が与えられる。⑤長期勤続者,中高年齢者を解雇するときは解雇手当を支給する。などである。この制度のもとでは労働者の解雇は困難になり,とくに中高年層については解雇コスト高となるため,若年労働者が解雇されやすくなるほか,労働市場への新規参入者にとっても雇用機会が縮小される。
つぎに最低賃金がとくに問題にされているのはアメリカである。アメリカでは州際産業に対する一律の連邦最低賃金と州内産業に対する州最低賃金との2つの最低賃金制がある。州際産業の範囲はかなり広く定められており全労働者の7~8割に及んでいる(そのうち実際の適用者は8.4%)。連邦最低賃金は77年の法律改正で第3-4-9表のように引き上げられることとなったが,問題とされるのは,こうした最低賃金が熟練度の低い若年労働者等の限界生産力を上回っているのではないかということである。そのため雇用主が若年労働者を雇いたがらなくなる傾向があるというのである。こうした間題に対しては,若年労働者に対しては通常の最低賃金の,たとえば8割を適用する等の案が考えられているが,労働側の反対で今までのところ実現していない。
また,欧米諸国においては,今回の不況時に失業保険の拡充強化が行なわれ,失業者がより長期に求職活動を維持できるようになったことが失業にともなう困苦を緩和するとともに購買力を維持して不況の谷の深まりを防ぐなど,失業情勢の改善に役立ったが,一面では失業給付が切れるまで次の就職をしないとか非労働力化しないという状況を招いているともいわれている。
その後,大量失業の定着とあいまって失業保険財政が悪化したため,保険料率の引上げ,給付条件の厳格化等制度の見直しを始める国もみられる。
(3)資本設備の相対的不足
石油危機以降の低成長により各国で設備投資が伸び悩みそのために欧米諸国においては労働力と比べて資本設備が相対的に不足する国が多くなっている。
OECDの推計によれば,資本ストック不足による失業率の寄与度が74~76年の景気回復局面にもかかわらずいずれの主要国をみても高まっている。
例えば,アメリカでは74年にはゼロであったものが75年0.2%,76年0.6%と次第に高まっており,同期間にイギリスでは0.1%から0.9%へ,西ドイツは0.3%から1.0%へ,フランス0,1%から0.9%へ,イタリア0.8%から1.8%へ,日本ではゼロから0.2%へ上昇している。
また,アメリカの労働力の天井と資本設備の天井との動きを見ると,67年から72年までは後者が前者よりも高かったのが,75年以降77年には前者が後者よりも高くなっている(CEA)。これは言うまでもなく,労働の完全雇用が達成される前に設備上のボトルネックにぶつかってインフレを悪化させる可能性が大きいことを意味している。78年以降設備投資の伸びが高まり資本ストックの伸びもそれにつれて高まったものと考えられるが,労働力もいぜん高い伸びを維持しているので,労働力の天井と資本設備の天井のギャップも縮小したとしても,まだ依然として残っているものと思われる。
また石油危機等によるエネルギー不足も資本設備の不足と同様に作用する。たとえばOECDの中期見通しによれば,OPECの石油供給制約のため,かなりの消費節約努力を行なっても85年までのOECD諸国の実質成長率は年平均3.3%に抑えられることとなるとしているがこれは完全雇用達成に必要な成長率をかなり下回るものと考えられる。そのためのエネルギー制約上からも失業が増大する可能性がある。