昭和47年

年次世界経済報告

福祉志向強まる世界経済

昭和47年12月5日

経済企画庁


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第1部 通貨調整後の世界経済

第1章 適正な為替レート水準を求めて

8. 本格化する通貨改革討議

9月は通貨の秋であった。まず,OECDハイレベル・グループによるレポートが発表されたが,貿易関係の提言の申で為替相場制度の弾力化とともに赤字国のみならず黒字国の責任の分担も論じている。

次に注目を集めていたIMFの報告書は通貨制度改革の必要性を述べた後,①為替レート調整メカニズム,②交換性と国際収支不均衡決済,③諸準備資産の役割,④攪乱的資本移動の問題,⑤国際通貨制度改革と発展途上国について諸意見を出している。この中では基礎的不均衡が存在する場合は平価変更を行なうという為替相場制度の弾力化や,準備資産におけるSDRの地位の強化など注目すべき提案を行なっているが,金の地位,過剰ドル問題などの点で各国の対立する意見を併記する形がとられていて,通貨改革へむかってこれから多くの月日と度重なる交渉が必要とみられた。

9月中旬に開かれた拡大EC蔵相,外相会議では,①9月末に期限の来るイタリアへの特別支援措置の3ヵ月延長,②懸案の欧州通貨基金の創設,③EC共通インフレ対策の採用,④拡大EC首脳会談の予定通りの開催が合意され,通貨改革の本格的論議を前にECの団結を示したが,その経過でみられたフランス,西ドイツを両極とする各国の対立は完全に解消されたわけではない。加えて,フロート中の英ポンドや特別措置を受けているイタリア・リラをかかえて,EC統合の道はいぜんけわしい。

また,下旬にはIMF総会がワシントンで開かれ,今後の通貨改善の交渉に明るい兆しが見え始めた。注目の「通貨改革のための20ヵ国委員会」も第1回の会合のあと「国際通貨制度の改革の合意に向って急速な前進を遂げよう」との意見を表明した。


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