昭和45年
年次世界経済報告
新たな発展のための条件
昭和45年12月18日
経済企画庁
第1部 1970年の世界経済動向
第4章 主要国の経済動向
中国経済は,1969年に文革前の国民総生産規模(66年)にまで回復し,70年に入って上期比でみて8~10%増になったものとみられている(サウス・チャイナ,モーニング・ポスト誌)。これは主として文革以後の生産秩序の回復によるものである。
工業生産も69年にひきつづき全国的な高まりをみせ,70年上半期には多くの地域で前年同期比15~54%増となった。とくに69年末強化されてきた地方小工業の増勢が注目される。地方小工業は農業増産と国防体制の強化をねらいとしつつ,地方ブロツクごとに育成されているが,これは大躍進段階の地方小工業を再検討して再生したものであり,その動向については,コスト面その他でやはり問題点をふくんでいるといえよう。
農業生産も夏作(小麦,大麦,早稲)は69年の生産高を上回ったものとみられている。農業増産は主として作付面積ならびに濯浅面積の拡大,肥料の増設,品種改良によってもたらされたが,フイリピンで開発された高収量品種のIR-8もすでに導入されていると伝えられている。
一方,対外貿易も69年には貿易総額でみて前年比わずか4.1%増にすぎなかったが,70年上期の対自由圏諸国(主要24カ国)との貿易は,輸出はほぼ前年並の水準に止まったものの,輸入は43%増と記録的な増大を示した。輸出の停滞は原材料および農産品の国内需要増による輸出余力の減少のためで,また輸入の著増は主として日本およびヨーロッパ諸国からの鉄鋼,非鉄(とくに銅),肥料,機械の輸入増によるものである。とくに経済回復とともに機械および自動車の輸入が著増した。
なお8月末から9月初にかけて開催された党中央委員会(二中全会)で,全国人民代表大会(国会に相当)の開催が提案された。このことは文革後の政治的安定を示すものであり,近く開催される人民代表大会では,おそらく文革の総決算ともいうべき国家主席,政府機構人事の決定,ならびに憲法改正草案,第4次5カ年計画(1971~75年)案の審議などが主要な議題となるものとして注目される。