昭和42年

年次世界経済報告

世界景気安定への道

昭和42年12月19日

経済企画庁


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第2部 世界の景気変動とその波及

第4章 景気変動と資本移動

3. ユーロ・ダラーの動き

米欧間の短資移動は,ユーロ・ダラーの変動に特徴的にあらわれている。ユーロ・ダラー市場発生後現在までの約10年の間に,その資金量は130億ドル(1966年末)を越え,国際短期資金移動に大きな役割を担うにいたった。ユーロ・ダラーは通常アメリカ以外の国の居住者に保有されて,ヨーロッパの銀行やカナダ,日本その他の国の銀行に期限をつけて預金された米ドルである。この資金は国際的に貸出され,多くの場合貿易金融に利用され,また商業銀行の対外運転資金の補充や金融市場操作に利用され,中央銀行は商業銀行の流動性を増減し,公的準備の調整に使用する。この市場の金利は西欧主要金融市場金利よりも概して安いが,アメリカよりは高い。そのため高金利を求めてアメリカのドルがヨーロッパに流出したのであったが,65年2月,ドル防衛によって銀行に自主規制の枠がはめられた。これに対し,アメリカのユーロ・ダラー取入れ(第100図では「資産」)は変動を繰返しながら微増し,66年になってからはアメリカのブームと金融のひっ迫を反映して,30年来の高金利といわれた66年秋まで急速に増大した。その後,アメリカ景気の停滞もあって,アメリカのユーロ・ダラー取り入れは弱まり,67年第3四半期以降景気の上昇,金利の騰貴を反映して再び取り入れがふえたとみられる。


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