昭和41年

年次世界経済報告 参考資料

昭和41年12月16日

経済企画庁


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第4章 フランス

7. 経済政策の展開と見通し

(イ)第5次計画の目標と第1年後の実績

第4次計画は65年で終り,第4-1表のように,その間国内総生産,消費,投資,輸出など主要経済諸量はいずれも計画目標をこえる成長を実現した。66年は第5次計画実施初年度に当るが,その実績(政府予測)を目標と比べてみると,消費がやや低めで,投資は同率であり,経済成長(国内総生産上昇率)は輸出の大きな伸びによってやっと目標を達成している。このように,66年の経済はいまだ一歩の感があるが,鉱工業生産や民間企業の生産的投資の上昇といった明るい面も見逃せない。

第5次計画の物価目標値はきわめて低いので達成が困難であろう。

(ロ)経済社会政策の実施等

これまでも経済の体質改善策は行なわれてきたが,第5次計画はとくに制度的改正も含めこの点の推進をきめており,66年は計画実施初年度として各種の重要な政策が提起された。66年中に実施に移されたものは多くないが,近く実施を前提に多くの政策が検討されている。その手はじめとして,2月に経済・社会政策がうち出された。これは65年からの比較的緩慢な景気上昇にてこ入れする短期的政策も含むが,経済構造にかかる措置をとりこんでいる。

その内容は以下のとおりである。

①66年2月15日から12月31日までに引渡される設備財に関する設備投資額の10%を法人税から控除する。②低所得者向け住宅建設の追加,③市中銀行の法定最低金利を廃止して貸付増加をはかる。④中小企業の設備投資促進のため,賃貸会社(リージング)に対する信用を拡大する。⑤地方公共団体の起債を拡大するためその管理機構を改正する。⑥家族手当,老齢手当増額と最低賃金の地域格差是正などによって消費を刺激し,あわせて社会政策を進める。⑦計画契約(企業または企業グループが価格,賃金,投資,輸出等に関する計画に関して政府と契約を結ぶ)の範囲内で安定計画による工業品価格凍結を緩和する。⑧国鉄運賃引上げ。⑨畜産振興のため施設構築援助,技術開発を促し,また,老齢農業者の離農促進などの農業政策。⑩労働者の企業資本参加(企業利潤の一部を賃金引上げあるいは株式給付のかたちで労働者に還元する)および所得政策実施のための所得,価格研究センターの開設,⑪外国人投資の実情,その誘致基準を検討するための外国人投資委員会の設置。

これらの政策の大部分はすみやかに実施に移され,とりわけ,設備投資減税措置が,前述のような設備投資の回復をもたらしたことは大きな収穫であった。しかし,工業品価格に関して,65年3月の安定契約(企業あるいは企業グループが製品全体の価格安定維持という条件で自由価格を政府と契約する)またはここに出された計画契約を政府と結ばない企業には安定計画の凍結を続行,しかも,このような措置が第5次経済期間中(1966~70年)実施されるという政府の物価安定堅持の方針が明らかにされ,一方,このような強力な物価安定策は投資意欲を低下させるという反対の声もあったが,これらの契約を結ぶ企業または企業グループ数は月を追って増加している。

また,労働者の企業資本参加の問題は大きな議論を呼び,いまだ検討の段階を出ていない。

一方,社会保障費の増額は財政負担をとみに増し,66年8月から67年末までに限って企業主の社会保障費負担引上げが行なわれた。また,企業向け補助金なども65年よりも大きく増し,財政の均衡はほぼ維持されるものの支出は65年より大幅にふえるとみられる。地方財政は開発投資進展などのために66年には赤字がいっそう拡大した。また,現金通貨発行高はここ数年増加率の低下をみている。

その他の政策の主だったものをいくつかあげる。

① 企業統合の促進

近年企業統合促進策がとられ,企業統合件数は57年の500件から65年には1,500件と3倍増した。65年までは中小企業の統合が多かったが,66年にはいってからは,第5次計画実施のための3委員会の一つが企業統合を促進する役目を負い金融機関も含めた大企業の統合によるワールドエンタプライズ育成が促進された。

② 金融市場の改革

第4-7表 企業の自己金融比率

第4-7図 通貨量と銀行貸出

第4-8表 証券発行高

民間企業の投資自己金融比率が最近低下傾向にあり,これによる投資の削減などもみられ,投資資金調達方法が問題になっていた。この点の打開策として66年11月はじめ,金融市場の大きな改革が発表された。それは,以下のような要旨である。

③ 職業訓練

職業訓練も第5次計画の大きな課題であり,66年には新規労働力急増や企業統合による中高年齢者の失業が目立ったり,職業教育再訓練の必要が痛感され,これに関する委員会と基金の設置など職業教育の基本方針をぎめる職業教育法案が議会に提出された。

④ 地価抑制策

都市周辺の地価上昇を防ぐため,64年1月から1度も発動されなかった同様の主旨の法律を改め,建築者にかなりの都市計画税を課すこと,過密戸数税を設けるなどの法案を検討している。


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