昭和41年
年次世界経済報告 参考資料
昭和41年12月16日
経済企画庁
第4章 フランス
66年の貿易をみると,輸入のいちじるしい増加と,65年にはおよばないものの輸出の予想以上の伸びが特徴的であった。
輸入は,65年の2.4%増に比べ,66年1~9月には16%増(前年同期比)となり増勢を強めた。これは,生産上昇,在庫新形成にともなったもので,民間企業設備投資の回復による生産財輸入の増加,および繊維,皮革,自動車などの半製品,また,工業品についで非鉄金属など原料の輸入が大きかった。地域別にみると,EECからの輸入がいぜん増加を続けた。フランス圏その他の地域からの輸入は減少している。
輸出は65年後半以後も増加を続けたが,その増勢はしだいに鈍化し,66年1~9月の増加率は65年の11.6%を下回ったが,なお,10.5%の高水準を維持した。景気調整が長びいたこと,また主要輸出相手国のインフレ傾向による需要増加が幸いし,フランスの輸出は予想以上に伸長した。また国内における物価安定が輸出を促進したことはいうまでもない。第4-5,4-6図にみるように食料品を中心とする加工消費財および農業機械などの生産財の輸出の増加が大きくなり,輸出構造は若干改善された。東欧諸国へのルノーのプラント輸出は,ドゴールの東欧外交の推進とともに注目された。輸出もEEC諸国,とくにイタリアやベルギー向けがいちじるしかったほか,イギリスや東欧諸国,中共向けもかなり増加した。アメリカやカナダへの輸出も65年ほどでなかったが好調であった。これまで,最大の輸出市場であった西ドイツはその比率を減じた。このような輸出の伸長によって輸入の著増にもかかわらず貿易収支は65年後半10億フラン,66年前半3億フランの黒字となった。66年は貿易収支の黒字幅が65年よりも減少するとみこまれる。65年後半赤字となったその他の経常収支項目は,労働送金収支がいっそう悪化しているが,観光収支が改善され,利子受取がかなり増加したため66年前半には再び黒字となった。
資本収支は,諸外国の金利高によって65年後半赤字となったが,66年にはいって弱勢ながらもちなおした。66年前半の長期貸付,直接投資の収支はほぼ65年前半なみに回復したが,フランス証券の売れゆき不振が目立っている。また,民間短期資本の流出は減少している。総合収支は,65年後半黒字幅が減少したが,66年前半は再び増加し22億フランの黒字となったが,年間では65年の47億フランを下回るとみられる。
1959年以来国際収支が黒字を続け,65年後半,66年前半には,主として輸出の伸びにより,対外準備は急速に増加し,7月には59億ドルに達した。また,保有外貨の積極的な金兌換の結果,対外準備に占める金比率は86%にのぼった。
66年秋には輸入増加および対外債務返済などのために対外準備は減少したが,経済全体の好調な動きから,楽観されている。