昭和38年

年次世界経済報告

昭和38年12月13日

経済企画庁


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第2部 各  論

第4章 国際商品の動き

4. 国際機関における一次産品問題の展開

近来,各種の国際機関において,低開発国貿易促進に関する問題が盛んに論議されるようになった。これは低開発国に対してもっぱら資本と技術を与えて援助するという従来の考え方から,貿易を通じての開発という考え方への変化を反映したものとみることができよう。

(a)ガットをめぐる動き

しかし,現実には低開発国の一次産品および製品輸出に対しては,先進国側に幾多の障壁がある。この問題に対して,従来ガット,とくにその第三委員会が各種の活動を行なっており,1961年の閣僚会議では「低開発国貿易促進に関する宣言」が採択をみるにいたった。けれどもその後の宣言実施の状況は,低開発国側にとって必ずしも満足のいくものでなく,翌62年11月の第三委員会で低開発諸国は貿易障壁撤廃のための「実行計画」を提案,期限つきで上記宣言の実行を迫ることとなった(総論第2章:IV・2参照)。しかし,63年5月の閣僚会議における先進国側の態度は消極的でとくにEEC諸国は本件については全面的に態度を留保した。

(b)国連貿易開発会議

1964年3月に開かれる国連貿易開発会議(U.N.Trade and Development Conference)は,すでに1962年7月の国連経済社会理事会以来,その開催が決定されていた。上記のような先進国側の消極的態度は,ガット等既存の国際貿易機構に対する低開発国側の不満と批判を招くこととなり,この会議に対する低開発諸国の期待をいっそう大きなものにしたといえよう。63年1月および5月に開かれた準備委員会では次に示す七つの仮議題の決定をみた。

このうち低開発国側がもっとも関心を示したのは,一次産品関係の議題IIで ①一次産品生産の長期的傾向②貿易上の障壁撤廃,差別除去③低開発国相互の一次産品貿易促進④一次産品価格安定策(商品協定を含む)⑤補償融資スキーム等のサブアイテムにわかれる。このうちとくに,②の貿易障壁撤廃は従来ガットの専管的事項であったのが,国連の場でとりあげられるようになったことが注目され,これに関して国連実行計画ともいうべきものの採択を提案する動きがみられる。また,一次産品問題と直接の関連はないが,機構問題に関する議題VIも先にのべたような理由から注目すべき事柄である。一部低開発国および共産圏の主張するような,新しい国際貿易・通貨機構の設置は実現の見込がないとしても,これを契機に,国連との関連においてガットの今後のあり方が問題とされるであろう。


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