昭和38年

年次世界経済報告

昭和38年12月13日

経済企画庁


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第2部 各  論

第4章 国際商品の動き

1. 国際商品相場の上昇

久しく低迷を続けた国際商品相場は,1962年の秋から動意をみせはじめ,以後,年が明けてからも毎月ほとんど休みなしに上昇を続けた。代表的一次商品16品目を含むロイター商品相場指数(1931年9月8日=100)のあしどりをみると1962年9月の最低値407.2を谷として上昇に転じ,63年5月下旬のピーク時には478.9となった。その後,夏場に入って砂糖相場の反落から一服状態となったが,10月に入って再び騰勢に転じ,スエズ動乱直後(1957年1月)の高値506.8にせまる勢いをみせた。値上り品目中,最高の上昇率をみせたのは砂糖で上記ロイター指数のあしどりは砂糖の動きに左右されているところが大きい。国際粗糖相場はキューバ糖の不振,欧州ビートの不作から1963年初には前年同期の約2倍となり,5月の暴騰時には1962年初の4倍となった。5月22,23両日のニューヨーク国際相場(ニューヨーク・コーヒー・砂糖取引所8号約定)はポンド当り12.6セントで,スエズ動乱直後(1957年4月)の高値6.85セント,および朝鮮動乱後(1951年6月)の高値8.05セントを大きく上回っている。しかし,この時期のニューヨーク市場では,先物取引件数が極度に増大し,年初の3倍となっていた。このためアメリカ政府と議会は,これら取引きの内容,とくに不健全な投機取引きについて調査すると発表し,これをきっかけとしてかなり大幅な反動安をみた。けれども,寒波による1963年のビート作付の伸び悩み,キューバ糖の引続く不振から,基本的な砂糖の需給関係はいぜん逼迫しており,相場は10月に入って反騰,11月には5月のピークを抜く勢いを示した。

しかし,今回の商品相場の上昇は,砂糖ばかりでなく,ココア,羊毛,亜鉛,鉛,すず,銀,サイザルなど多くの品目にわたっている(第4-1図)。

値下りしたものとしては合成品の圧迫によるゴムだけが目立つ存在であった。このような広範囲にわたる商品相場の上昇をどう考えるべきであろうか。ここ数年来ほぼ需給の均衡している羊毛,欧米の工業生産の上昇にともなう非鉄金属は別として,砂糖を含む熱帯産品については,当初,その値上りは天候,病虫害等による不作にもとづく一時的なものであるとみられていた。しかし,後にコーヒーについてみるようにうち続く市況の低迷,地価,労賃の上昇などから生産者に生産・投資意欲の減退がみられ,またサイザルの場合のように値上りにもかかわらず増産に対する慎重ムードがみられるなど必ずしも一時的とはいえない要因があらわれてきている点注意すべきであろう。

個々の商品の動きについては後にのべるが,ここではやや特殊な性格をもつ二つの商品,梱包材料としてのサイザルと不定期船運賃についてみよう。

これらは他の商品の生産増加,荷動きの動向と密接な関係をもっている。このうちサイザルの値上りはキューバ緊張にともなうアメリカの大量買付けと,62年度の穀物豊作にともなう需要増加によるものである。

他方,不定期船運賃は1962年9月を底として反騰,経済活動の一般的上昇,とくに,フランスの石炭ストによる欧州向け石炭,日本の景気回復によるくず鉄輸送などを支えとして,ほぼ一貫して上昇傾向を持続した。63年秋口以降も,ソ連,欧州,日本の63年度産小麦の不作による大量の穀物輸送需要を反映して堅調に推移している。


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