昭和35年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
昭和35年11月18日
経済企画庁
第1部 総論
第4章 1961年世界経済の展望と問題点
非工業国は60年に入つでから,輸出に増勢鈍化の気配がみられるようになつた。これは,アメリカ景気の後退の影響を受けているものと考えられる非工業国の輸出には工業原材料が多く含まれている。1961年には輸出はさらに減少傾向を示すのではないかとも懸念される。
したがって,外貨準備高も減少することになり,61年には輸入も削減せざるを得ないであろうが,先進国の政府援助の増加,また民間外資の導入も期待されるので,経済開発に必要な基礎資材の輸入はある程度確保されるであろうから,輸入全体としてもその減少は小幅なものにとどまるであろう。
農業生産は非工業国経済において,大きなウェイトを占めており,農業技術,開発投資も一段と進んでいるので,よほどの天候異変がない限り,61年もその生産は増大するものと見込まれる。ただ,先進国向け輸出原材料であるゴム,ジュート等には若干生産の停滞が起きることになろう。
鉱工業生産については,先進国の景気停滞の影響を受けて,開発計画の若干のおくれを生じることになろう。しかし,非工業国の国内需要ば増大しつつあるので,61年においても生産拡大の歩みを進めるであろう。
このように,61年の非工業国経済,貿易の面でアメリカ景気後退の影響を受けることが予想されるが,これらの影響を最小限に防止し,かつ,非工業国の経済拡大を持続させるためには,域内開発計画の推進ならびに先進国の経済援助の増大が,ますます重要な役割を果たすことになろう。