昭和33年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
経済企画庁
第十一章 最近のラテン・アメリカ経済
ラテン・アメリカ諸国の物価は,非常に安定した国と,極端に騰貴した国がある。ラテン・アメリ力には,通貨関係で,ドル地域と非ドル地域がある。一般に,ドル地域諸国は物価が安定し,非ドル地域は,インフレ的傾向が強い。
ドル地域諸国は,カリビア海方面,中米にあり,南米では北部のベネズエラ,コロンビア,エクアドルがこれに属する。ドル地域諸国は,米国との連携が強く,米国の経済援助,投資,借款などで比較的に安定している。貿易の関係からも,ドル市場に対し売り込むために物価を米国の水準とにらみ合わせて,騰貴させない工夫をしている。これら諸国は,物価が安定しており,インフレは全然起っていないか,または緩慢である。
これに反し,南米の非ドル地域諸国は,一般に物価騰貴が激しく,インフレが高進している。
インフレ傾向のないか,または非常に軽度の国は,ベネズエラ,エル・サルバドル,コスタリカ,キューバ,ガテマラ,ド々ミニカ,エクアドル,ホンデュラス,パナマの諸国で生計費の騰貴率は,アメリ力より少ない。インフレ傾向の認められる国は,コロンピア,ペルー,メキシコ,ウルグアイ,ニカラガの諸国。インフレ高進のめだっている国は,ボリビア,パラグアイ,テリ,アルゼンチン,ブラジルの緒国である。一九四六年から,一九五七年央までの間に,生計費が,チリでは二五倍,パラグアイは四三倍,ボリビアでは一一九倍に達した。(The Chase Manhattan Bank,Latin Business Fourth Highlights,Quarter1957)一九四七年から一九五七年の間に,通貨価値の減価率は,年平均七・五%,アルゼンチンでは一六・五%,ブラジルでは一二・一%,ベルーが九・五%ウルグアイが七・五%,メキシコが六・九%に達した。(The First National City Bank,Monthy Letter Business and Economic Conditions,June1958)。
インフレ高進の原因はさまざまであるが,多くの場合,過大の開発計画その他で政府支出が増加して赤字が膨大となり,財源を中央銀行からの借入に仰ぎ,通貨膨張を招いたものである。物価騰貴の著しい国は,またほとんど通貨流通高の増大がめだっている。インフレの経済的影響はさまざまであるが,多くの場合は,経済発展を阻害している。