昭和33年

年次世界経済報告

世界経済の現勢

経済企画庁


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第七章 東欧経済の動向

四 長期計画

一九五七年末にはソ連も東欧のいずれの国も,その範囲および性質において一九五〇~五年に施行されていた五カ年計画に相当する長期計画をもたなかつた。一九五六年中にこれらの国は新計画期間を同じにするという決定を発表し,ブルガリア以外の全ての国が一九六〇年を目標とする一定の主要目標をふくむ計画指令を公表した。それはより詳細な包括的な計画文書の発表を暗示したのであった。一九五六年の後半と一九五七年のはじめには,経済政策と計画一般に対する態度に若干の著しい変化がみとめられた,チェッコスロバキア,東独,ポーランドにあいついで導入された計画の性格はもとの草案とは著しく異なつていた。ソ連では一九五六~六〇年の計画に代つて一九五九~一九六五年の新計画が実施される旨の発表があつたが,計画の詳細はまだ発表をみない。ハンガリーでは一九五六年七月の古い計画がまだ修正されるにいたらず,ブルガリアでは一九六〇年の目標は発表されない。東独とポーランドにおいては,計画期間の第二年次に五カ年計画の修正が行われた原因は,一九五六~五七年の実績からみて,それらの経済の将来の成長のもとの評値があまり楽観的であつたということである。

とくに東独においてその傾向が強かつた。そこでは国民所得の成長率が修正計画において一九五五年から六〇年間に四五%から約二五%に引下げられたのであつた(第7-10表参照)。

第二に若干の国では消費改善への趨勢が付加された。チェッコスロバキアでは一九五五~六〇年に計画された投資の成長率の低下と投資構造の変化,消費財生産目標の向上に現われ,ポーランドでは過去十八カ月間に現われた所得の大増加によつて,一九六〇年にいたる期間の残りについて計画目標が一人当り消費の増加が比較的低くて十分でないことがわかつた。東独では新投資の必要のためその期間の計画増加率は不変であつた。東独,ポーランドにおいて著しく莫大な資金が住宅に向けられ,ポーランドでは原案より農業向投資が五〇%増額されたのである。

アルバニアでは原案修正の論拠の多くは,計画が作成されて以来豊富な油田が突如発見されたことにもとづいている。一九六〇年の原油生産高は一九五五年の約九倍に達するはずである。

東独の原計画修正の目標は国内用消費用農工業製品の供給を抑えようとするにある。それは同国の投資計画が,莫大なエネルギー,原材料の輸入を必要とするので,製造工業品の輸出を高めると共に,消費財輸入を抑えようとするものである。

チェッコスロバキア,ポーランド,東独の計画修正の今一つの特徴は国家投資と非国家投資の比率の変化にある(第7-11表参照)。これは私的協同組合住宅の建築について信用が拡張され,また個人所得の増加の一部を農業,手工業への投資に向けることを奨励しようとすることによるのである。

経済決定と管理の地方分権化はこれらの国に種々の程度において導入され,個々の企業と地方政府に大きな自主性が与えられつつあるが,それは中央計画の観念を変化せしめるものである。すなわち,中央当局の定めた指令と地方当局の定めた指令とが必ずしも一致しえなくなり,長期計画に弾力性が付与されるであろうし,また国際貿易に依存する程度が高まるにつれて長期計画に弾力性が賦与されるであろう。

東欧諸国の支配的な見解によると,五カ年計画は今や以前の指令的な性質を失いつつある。将来種々の経済部門で追求しようとする発展の型の一般的な指針として役立つにすぎない。限られた場合においてのみ特定の企業の指令として役立つのである。

他方において十年から十五年にわたる見通し計画の作成に重点が置かれる。それは三つの目的をもつている。①望ましい発展の型を保証する。②基幹部門の隘路の発生をさける。③これらの部門の国際協力と特殊化を促進する。そして将来の経済発展にとってとくに長期投資へ努力が集中されるのである。

全ての国々で経済の主要部門についてこれらの見通し計画が用意されつつあるが,それは相互経済援助会議の種々の技術委員会で審議されるはずである。


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