平成8年度年次経済報告(経済白書)公表に当たって

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戦後の日本経済は,国際環境にも恵まれて,国民の英知と努力の結果,復興から高度成長を達成し,二度にわたる石油危機や円高をも乗り越え,世界第二位の経済規模を実現し,世界経済の運営に重要な役割を担うまでに発展を遂げました。この背景には,先進国へのキャッチアップを可能とした日本の産業構造や「日本的経済システム」と呼ばれる制度的枠組みがあったと考えられます。しかしながら,バブル崩壊や世界の「大競争」,急速な人口高齢化等,昨今の急速な内外の環境変化の中で,我が国はかつて経験しなかった低成長を余儀なくされました。戦後の成功物語を支えてきた経済システムが,限界に達しているのかもしれません。

日本経済は,現在歴史的な構造調整期にあります。こうしたなかで,日本経済はどこに向かおうとしているのか。少なくとも,これまでの経済システムにしがみついていては,日本経済に前途はないといっても過言ではありません。ポストキャッチアップの時代にふさわしい構造と制度を築くことが,閉塞感を払拭し日本経済のダイナミズムを復活させる条件なのです。

1947年の「経済実相報告書」から数えて50回目となる本報告のねらいは,こうした日本経済が直面している現状を明らかにするとともに,中長期的にダイナミズムを復活させるためには何が必要かということにこたえようとするものです。

以上の内容を踏まえ,本年度の年次経済報告の副題は「改革が展望を切り開く」といたしました。本年度の年次経済報告が,我が国経済の現状に対する理解を深め,その課題を解決する上で,いささかでも貢献できれば幸いであります。

平成8年7月

田中 秀征

経済企画庁長官

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