平成7年度年次経済報告(経済白書)公表に当たって
本年,日本経済は,戦後50年という節目の年を迎えるに至りました。この半世紀にわたる日本経済の歩みを顧みると,内外の経済環境の激しい変化の中で日本経済に課せられた様々な試練に対し果敢に挑み克服していった歴史であったことを改めて認識させられます。また同時に,こうした成果をもたらした原動力が,日本経済の持つ適応力の高さにあったことに気付かされます。しかしながら,今日の日本経済は短期的にも中長期的にも新たな局面を迎えています。
日本経済の現況をみますと,景気循環と構造変化が複雑に絡み合い,先行きに対する不透明感が広がっています。景気については,「バブル」の後遺症を引きずりながらも,緩やかながら回復基調をたどってきましたが,円高等の影響が顕在化してきたため回復基調に足踏みがみられるようになりました。また,構造面では,世界が市場経済を軸とするいわゆる「大競争」にあるなかで,今日の円高は,アジア新興国・地域の台頭もあり日本経済に厳しい調整を強いています。さらに,日本経済の世界市場への統合や他に類をみない急速な高齢化等への対応にも迫られています。日本経済は,現在まさにこうした景気,構造両面における調整の途上にあり,戦後50年の枠組みを見直し,発展のための新たな枠組みの構築を模索しています。
本報告のねらいは,こうした状況に対し,日本経済が市場経済により再度本来のダイナミズムを復活させるためには何が必要かということに応えようとするものです。以上の内容を踏まえ,本年度の年次経済報告の副題は「日本経済のダイナミズムの復活をめざして」といたしました。本年度の年次経済報告が,我が国経済の現状に対する理解を深め,その課題を解決する上で,いささかでも貢献できれば幸いであります。
平成7年7月25日
高村 正彦
経済企画庁長官