平成6年度年次経済報告(経済白書)公表に当たって

[目次]  [次へ]

1993年初めから最近に到るまでの日本経済は,円高が一段と進行し景気の後退が長期化するなかで,空洞化への対応,規制緩和など長期的な課題が強く認識されるようになりました。94年に入ってからは,経済の一部に明るい動きが現れ始め,次第に広がりつつありますが,まだ内需中心の本格的な回復局面に入ったとはいえない状況にあります。

このような現状にある日本経済を分析対象とした本報告は,次のようなねらいを持っています。

第一は,景気の現状と展望について多面的に分析することにより,先行きの不透明感を払拭するよう努めたことです。今回の景気後退過程では,通常の景気後退過程と異なり,バブルの崩壊への調整などが絡み合いながら進行してきました。こうしたことから,過去の経験が単純には当てはまりにくく,人々の予想よりも実際の経済が悪化するという形が繰り返され,景気判断が難しくなっている面があります。本報告では,こうした今回の景気後退の背景を総合的に分析し,景気を回復軌道に乗せていく上での課題を明らかにしています。

第二は,景気後退の中で明らかになってきた構造的課題を分析することにより,今後の日本経済の中長期的な発展に向けて基礎的な議論の素材を提供しようとしたことです。本報告の議論をも踏まえながら景気を一刻も早く本格的な回復軌道に乗せるよう努力する一方で,規制緩和などの構造改革を推進し,内需中心の成長と国民生活の質的向上を図っていくことが必要と考えられます。

以上の内容を踏まえ,本年度の年次経済報告の副題は「厳しい調整を越えて新たなフロンティアへ」といたしました。本年度の年次経済報告が,我が国経済の現状に対する認識を深め,その課題を解決する上で,いささかでも貢献することができれば幸いあります。

平成6年7月26日

高村 正彦

経済企画庁長官

[目次]  [次へ]